地形環境の情報と考古資料を利用して、東アジアとくに中国長江下流域から江蘇平原一帯における初期の稲作化過程の一端を解明した。具体的にはDEMを作成して地形環境の解析を行った結果、江蘇平原から太湖平原にかけて広大な低湿地の地形環境が連なっていたことが分かった。東中国海沿いの海岸砂丘の形成と関係することから、これを「大後背湿地帯」と呼んだ。農耕具や漁撈具の時間的変化と地域差をあわせて考えると、水辺環境を利用した広範囲経済のなかの初現的稲作から水田稲作へ移行する過程に、「大後背湿地帯」の地形環境の変化は何らかの影響をおよぼしたと想定され、長江下流域一帯のなかでも異なる稲作化過程があったことを指摘した。
|