研究課題/領域番号 |
24520879
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
岡林 孝作 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, 総括研究員 (80250380)
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キーワード | 日本考古学 / 古墳時代 / 木棺 / 鎹 |
研究概要 |
古墳時代の木棺は刳抜式・組合式・釘付式の3系統に大別されるが、それらの系統を横断して使用された緊結用の金具として、5世紀に大陸から導入された鉄製の鎹がある。本研究計画は、古墳出土の鎹を集成し、その具体的な使用の部位や方法を復元的に検討するための基礎的資料の収集を行い、鎹使用のあり方、棺構造、棺と槨の関係などを整理した上で、日本における鎹の出現と展開を、古墳時代木棺の総体的な展開過程、さらには朝鮮半島、中国東北部を含めた東アジアにおける棺槨の大きな流れの中に位置づけることを目的とする。 本年度は、昨年度に引き続き、主として文献収集による古墳出土の鎹と出土古墳の発掘調査データの収集、出土鎹資料の詳細な観察に基づく調書作成等を実施した。保管機関における作業は、中・後期古墳出土の事例を中心に、のべ4機関に赴いて行い、簡易な実体顕微鏡等を使用して、鎹そのもの、および付着した木質の詳細な観察とともに、調書の作成、画像データ等の収集を行った。L字形に折り曲げて使用される特殊な釘についても、鎹との使用方法の比較を試みるため、出土資料の収集を行い、研究の深化に備えた。鎹の出土状態、鎹に付着する材(の痕跡)の類型化、その他の付着物、鎹そのものの変形などに着目し、それらの情報をパターン化して整理し、総合的に検討することで、鎹の具体的な使用法を明らかにする方法論については、論文としてまとめ、公表した。これに基づき、より効率的な観察手法が実践しうるとともに、鎹を使用した木棺構造の復元についても具体的に踏み込むことが可能になると考えている。 また、日本における鎹を使用した木棺の導入と展開のあり方に関連して、朝鮮半島南部における出土鎹資料について木棺との関係に初めて本格的に言及した論文の和訳を作成し、公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に引き続き、主として文献収集による古墳出土の鎹と出土古墳の発掘調査データの収集、出土鎹資料の詳細な観察に基づく調書作成等を実施した。保管機関における作業は、当初6機関程度を想定していたが、のべ4機関において実施できた。 本研究の目的を達成するためには、出土鎹資料の詳細な観察にもとづき、鎹の具体的な使用部位、使用方法を復元的に検討するための方法論の確立が不可欠である。本年度は、鎹の出土状態、鎹に付着する材(の痕跡)の類型化、その他の付着物、鎹そのものの変形などに着目し、それらの情報をパターン化して整理し、総合的に検討することで、鎹の具体的な使用法を明らかにする方法論についてとりまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、主として文献収集による古墳出土の鎹と出土古墳の発掘調査データの収集、出土鎹資料の詳細な観察に基づく調書作成等を実施する。本年度から、中期古墳出土の事例に加え、後期古墳出土の事例についても作業を進めているが、次年度も同様とする。内容として、本園度と同様、簡易な実体顕微鏡等を使用して、鎹そのもの、および付着した木質の詳細な観察とともに、調書の作成、画像データ等の収集を行う。また、本年度は収集資料のデータベース化を行い、総合的な考察を加えた報告書を作成する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は主として、人件費を旅費等に充当し、保管機関における作業を充実した。また、計画段階で予定していた実体顕微鏡・一眼レフカメラに代えて、運搬が比較的容易で、より実際の作業に適したデジタルマイクロスコープ・接写用のコンパクトカメラを昨年度購入したことで圧縮した物品費の一部を、資料収集作業の効率化を図るためブックスキャナの購入に充当した。 次年度は、引き続き保管機関における作業に重点を置くとともに、データベース化及び報告書作成のため、昨年度及び本年度、主として物品費・人件費の圧縮により捻出した約800千円を旅費・人件費に充当する予定である。
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