研究課題/領域番号 |
24520882
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
青木 敬 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (10463449)
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キーワード | 版築 / 掘込地業 / 墳丘構築技術 |
研究概要 |
当該年度は、前年度に引き続き古代日中韓の土木技術が具体的にうかがえる事例の収集をおこなった。くわえて日韓については、発掘調査現地での観察、調査担当者からの聞き取りと意見交換とをあわせて実施した。 日本の事例については、寺院における主要堂宇基壇の発掘調査事例を収集しているが、当該年度で西日本の事例については収集をほぼ終えることができた。事例収集の結果、研究初年度に見通しを得た東アジアにおける掘込地業と版築の技術系統が、日本列島内でさらに細分できることがあきらかになった。なお、収集した事例については、土木技術的特徴についてデジタルデータ化し、研究成果の公表へむけて準備を進めた。また、版築の施工面での技術的特徴を見出したため、『奈良文化財研究所紀要2013』で研究成果を公表した。こうした版築技術の研究成果は、現在整備事業が進んでいるキトラ古墳の墳丘復元に際しての施工にも一部反映させることができた。 中韓については、事例収集だけでなく、訪韓して現地での類例探索ならびに現地研究者と土木技術系統についての意見交換をおこなった。とくに古墳の墳丘構造について、2013年12月に釜山市で開催された国際シンポジウム「蓮山洞古墳群の意義と評価」で発表し、セッションなどで中韓の研究者と活発な意見交換をおこない、東アジア規模で土木技術を俯瞰するための基本的な理解を得て、本研究の方向性について基盤的な整備ができたことは当該年度の大きな成果である。 日本列島における古墳の墳丘構造については、その技術的系統の整理ができたため、先述したシンポジウムの予稿集、ならびに新潟市文化財センター主催のシンポジウム「蒲原平野の王墓 古津八幡山古墳を考える」の記録集で「古津八幡山古墳の築造方法とその背景」と題して原稿化し、公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日中韓における事例収集が順調に進んでいること、くわえて収集した事例の検討を進めた結果、古墳や寺院など複数かつ長期間におよぶ土木技術的所産について、技術系統が一定程度整理できたことなどから、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、古代東アジアの土木技術の事例収集を続ける。すでに土木技術系統の見通しが得られたため、今後収集した事例が、この見通しと合致するか、あるいは再検討を要するのか、慎重に見極めていくことが喫緊の課題となる。こうした検証を経て検討成果を論文化し、公表するための準備を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き検討対象とする事例収集に必要な物品費、および対象となる遺跡の現地踏査および調査担当者等からの聞き取り調査にかかる旅費を計上する必要が生じたため。 収集した事例の図面・写真・諸属性をまとめてデジタル化に要する費用、国内および中韓の対象遺跡への現地踏査、聞き取り調査を遂行するための旅費として計画的に使用することとする。
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