本研究では、東日本大震災からの水産業の復興について検討することを目的としている。 これまでの研究は、大きく2つの内容に分けられる。一つは被災地域の状況の把握とその対策に関する検討である。事例対象地域としては福島県いわき市と宮城県女川町をとりあげ、検討した。いわき市を含む福島県を検討するにあたっては、海洋の放射能汚染や試験操業、東京電力の賠償問題なども絡むため、これらについても検討を加えた。以上の研究を進める中で、水産物の風評被害対策の事例研究として、北海道標津町の地域HACCPの調査を行った。この調査の中から、価格維持のために水産物のブランド化を進める必要があるとの結論を導き、もう一つのテーマとなった水産物のブランド化に関する研究に着手した。これにあたっては、ブランド化の動きが特に活発である青森県下北半島を事例に調査を行った。 平成28年度は、前年度に引き続き、水産物のブランド化に関する研究を進めた。研究内容は、水産物のブランド化に関する理論的研究と、水産物ブランド化に関する調査に大きく分けることができる。前者については文献研究を中心とした。後者については、2つの調査を実施した。1つは函館市を中心としたマグロとコンブの調査である。これにあたっては、昨年度に実施した下北半島での調査との比較検討を視野に入れた。もう一つは、石巻市において新たな活動をしている組織の調査である。水産業の復興にあたり様々な新しい組織が生まれ、従来にはなかった活動をしている。そのような組織の調査を通して、水産業の新しい動きを把握した。 これらの成果については、経済地理学会北東支部例会において報告するとともに、岩手大学地域防災研究センターと連携して「災害文化研究会」(市民へも公開されたシンポジウム形式の研究会)を開催し、研究者間での討議を深めるとともに、市民への成果の還元を図った。
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