研究課題/領域番号 |
24520889
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
南埜 猛 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (20273815)
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キーワード | 国際情報交換 / インド / 台湾 / 溜池 / まちづくり / 中山間地域 / 地域資産 |
研究概要 |
本研究は、溜池を地域資産として位置づけ、持続可能な地域づくりの軸として溜池の活用を検討するとともに、地理学における溜池研究の深化を目的とする。その目的に対して、3つのパートと6つの検討課題(パートI:溜池の実態把握(①溜池の分布と動向)、パートII:溜池をめぐる今日的課題への対応(②溜池の維持管理とまちづくり、③溜池の維持管理とムラの存続、④溜池の維持管理の次世代担い手の創造)、パートIII:溜池研究の深化(⑤溜池研究の国際化、⑥溜池学の創造))を設定し検討をおこなった。 本研究の意義・重要性は,次の通りである。「パートI:溜池の実態把握」では、これまでの溜池研究の継承とその補完(研究空白地:北海道・沖縄)に加えて、既存の溜池研究では用いられていないGISを分析ツールとして導入し、溜池の分布と動向のより詳細な検討をおこなう。「パートII:溜池をめぐる今日的課題への対応」では、これまでほとんど研究がなされてこなかった中山間地域を研究事例として積極的に取り上げることにしている。また溜池を地域資源として位置づけて検討する点は,既存研究にない本研究の特色といえる。「パートIII:溜池研究の深化」では、単なる外国の事例研究にとどまらず、比較研究を通じて日本の溜池の特徴をより鮮明に明らかにしていくことをねらいとしている。溜池にかかわる学問の体系化は歴史学や農業土木学などでの試みがいくつかある。本研究では,地理学をベースにした溜池学の構築めざしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で示した6つの検討課題ごとに,「現在までの達成度」を以下に示す。①溜池の分布と動向では,昨年度構築した「GIS溜池データベース」に、2010年農林業センサス(北海道と沖縄)を追加し,GIS分析をおこなう体制を整えた。また沖縄で予備調査を実施し、関係資料の収集と本調査実施の準備を行った。②溜池の維持管理とまちづくりでは,「TT(淡山疏水・東播用水)未来遺産運動」の企画に参画し、現状把握と住民意識に関する聞き取り調査を実施した。③溜池の維持管理とムラの存続では,平成24年度に引き続き、「東条川疏水ネットワーク博物館構想」の企画に参加するとともに、東条川疏水地域の溜池調査をすすめた。④溜池の維持管理の次世代担い手の創造では,副読本の作成に取り組んだ。また将来の担い手である子どもの教育に携わっている教員への啓蒙として、教員研修において溜池を含む地域素材の教材化についての報告をおこなった。さらに教材化の一環として、平成24年度に引き続き「東条川疏水聞き書きプロジェクト」に参加した。⑤溜池研究の国際化では,インドでの現地調査を実施した。デリー・チェンナイでは関係資料の収集ならびに関係研究者との意見交換をおこなった。またチェンナイ近郊の溜池について現地調査をおこなった。調査の成果の一部は、東条川疏水授業実践研究会と日本地理学会春季学術大会で口頭発表した。なお、国立民族博物館の客員研究員として来日していた元マドラス大学教授のスバイヤー氏と意見交換をおこなった。⑥溜池学の創造では,地理学のほか、農学や文学など、幅広く網羅的に溜池学の構築のための文献・資料を収集した。また「ため池百選」に選定された溜池を順次調査し,平成25年度は大阪府と奈良県での調査を実施した。また平成24年度の調査結果を「日本の溜池I-「ため池百選」めぐり-」として論文発表した。
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今後の研究の推進方策 |
研究は,ほぼ計画通り進行している。全体として、②溜池の維持管理とまちづくり、③溜池の維持管理とムラの存続、④溜池の維持管理の次世代担い手の創造については、前倒しで進捗している一方で、①溜池の分布と動向、⑤溜池研究の国際化、⑥溜池学の創造が遅れ気味である。平成26年度は、①、⑤、⑥に重点をおいた取り組みを行うとともに、これまでの研究成果の発表を積極的に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属大学内の校内分掌との関係で,平成24年度に計画していたインド調査を平成25年度に実施した。それに伴い、平成25年度に実施予定であった台湾北部の桃園台地の現地調査を平成26年度に実施することとなった。またGIS溜池データベースの分析作業と関係資料(書籍)の収集を十分に行うことができなかった。また平成25年度に計画していた副読本の印刷を行うことができなかった。 平成25年度に実施予定であった台湾北部の桃園台地の現地調査を平成26年度に実施する。GIS溜池データベースの分析作業、関係資料(書籍)の収集を重点的に取り組みと副読本の印刷も平成26年度に実施する。
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