研究実績の概要 |
最終年度において,当初に設定した6つの検討課題ごとの成果は以下のとおりである。①溜池の分布と動向は,「1997年ため池台帳」をもとにした考察と分析の結果を,地理科学学会で口頭発表したほか,兵庫教育大学研究紀要に投稿した。②溜池の維持管理とまちづくりと③溜池の維持管理とムラの存続については,「TT未来遺産運動」と「東条川疏水ネットワーク博物館構想」の企画に参加し,現状把握と地元からの意見収集を行った。なお本研究の成果は,逐次,東条川疏水ネットワーク博物館の活動を通じて社会還元してきており,その活動により同博物館の運営組織から功労賞が授与された。④溜池の維持管理の次世代担い手の創造については,小学生を対象とした教育実践,副読本「遠い水の路」の作成,さらに教員向けに溜池の重要性を伝える講演を行った。また溜池などの水利施設にかかわる学習の地域教材化に関して,教科書分析を行い,地域の人・水・土に学び伝えるにおいて論文として発表した。⑤溜池研究の国際化については,台湾・桃園台地の溜池に関して兵庫地理学協会で口頭発表するとともに,兵庫教育大学研究紀要において論文発表した。また中国の事例については,中国水利史研究で論文発表した。⑥溜池研究の創造については,「ため池百選」の選定溜池を中心に,福島・栃木・長崎で現地調査を実施した。その一部は兵庫教育大学地理学研究室研究報告で論文発表した。 本研究では,GISの空間分析を用いた考察を行う予定であったが,十分に実施することができなかった。しかし溜池GISデータベースの構築は完了しており,また構築のためのノウハウは確立することができた。2012・2013年度に「ため池一斉点検」が実施され,そのデータが公開されれば,新規の研究プロジェクトで,本研究で構築した溜池GISデータベースに取り込み,最新のデータにより検証できる体制を整えることができた。
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