本研究の目的は、ヨーロッパ諸国の都市との激しい国際的都市間競争下に置かれているにも関わらず、持続的に発展しているとされるドイツの中小都市を事例として、ローカルな社会空間構造の変容と都市マネジメント戦略の両面から商業集積地の存立構造を検討することにある。具体的には、各都市の行政組織の有する権限・政治的状況の差異、都市内部の各地区の社会空間構造の地域的差異、および、よりローカルな範囲でのステークホルダーの意識と対応の差異が、商業集積地の持続発展プロセスにいかなる影響を与えるのかを解明しようとするものである。 本研究は、都市の社会・経済的変化を端的に示すと考えられる商業集積地の存立構造に注目して、都市間競争への対応と都市の持続可能性への対応という2つの政策課題の調整状況と、各ステークホルダーの協働的相互関係に基づく都市マネジメントの現状を把握し、商業集積地の存立構造に関わる地域的要因を解明しようとすることに特色がある。 本年度は、ハイデルベルク市、ヴァインハイム市、ダルムシュタット市において商業集積地の概要、商業振興計画、都市計画、国際的都市間競争への対応等に関する資料収集を行うとともに、前年度までの補足調査を実施した。その後、それらの結果を含め、研究期間全体にわたって収集した資料をとりまとめ、地図化処理を加えるなどして地理学的分析を実施した。 その結果、ドイツの中小都市の商業集積地においては、都市計画により大型商業施設の郊外立地を抑制していること、商業地区の整備と交通体系の整備を並行して実施し、公共交通の利便性の向上および駐車場整備を実現していること、近隣住民のニーズに即した商品を扱う店舗構成となっていること、文化イベントの開催や飲食店の存続を図るなど中心商業地区におけるショッピング以外の行動を惹起する魅力づくりに取り組んでいることなどが地域的要因として抽出された。
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