研究課題/領域番号 |
24520896
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
祖田 亮次 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (30325138)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 流域社会 / 民族間関係 / マレーシア / サラワク / マイグレーション・ヒストリー / 分水嶺 |
研究概要 |
平成24年度年度は、ラジャン川流域の事例を中心に資料収集・現地調査を進め、一部、クムナ川流域社会に関する聞き取り調査も行った。 具体的に言えば、ラジャン川に関して、歴史記録に残る民族間・集落間の戦乱や対立、葛藤を抽出する作業を行った。記録に残るだけでも、相当数の戦乱・対立があり、それらをどのように整理し、組み直すのかについての検討を行った。ラジャン川での現地調査については、とくに、20世紀後半以降の華人‐先住民の関係性について、土地資源をめぐる葛藤という観点から聞き取り調査を行った。また、1950~70年代に移動人口を数多く輩出したラジャン川中流域(支流のソン川・カティバス川周辺)において、20世紀後半の先住民移住史の背景についても、森林資源の希少性という観点から聞き取りを行った。これらのことをまとめることで、ラジャン川流域社会の葛藤の歴史と民族分布に関する記述の可能性を見通すことができたと同時に、ラジャン川からクムナ川やタタオ川流域への移動・移住の背景についても、一定程度の情報を得ることができた。 クムナ川流域についても、聞き取りを中心とする調査を行った。当初計画では、平成26年度に集中的に調査を行う予定であったが、ラジャン川や周辺流域との関係性は、想像以上に強く、ある程度は同時並行的に調査を行う方が効率的であると判断した。クムナ川流域の諸民族は、歴史的にも流域を越える移動を激しく行い、非常に複雑な民族混淆状況を形成してきたが、その背景として、分水嶺を越える上流からの流入と、沿岸移動を通した下流域からの流入の両方を考慮に入れなければならないことが分かった。 以上のことから、流域社会形成のいくつかのバリエーションを考察し、それらの相違点・共通点を抽出するだけでなく、異なる流域を結びつける移動ルート/パターンについて情報を収集することの重要性も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。ラジャン川については、膨大な資料をどのように扱うのかという問題点が残されているが、集落の空間的配置、民族分布などに関連するものに絞り込みながら収集、再整理することで流域社会史の再構成は可能になると思われる。一方、クムナ川については、予定をやや先取りする形で、一定程度の情報収集ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、タタオ川における民族の吸収・消滅・包摂状況に関する調査を中心に行うが、ラジャン川とクムナ川の流域社会に関する情報収集も補足的に行う。文字資料としては、サラワク官報のほか、ビントゥル開発局の各種行政資料の収集を行う。タタオ族やブキタン族に関しては、既存の研究が存在しているので、それらの二次情報を利用する。その他のいくつかの民族に関しては、オーラル・ヒストリーの収集が中心的な資料となる。 平成26年度は、クムナ川流域社会の形成史に関する調査を進める。平成27年度は、各流域社会を結び付ける人々の移動歴(マイグレーション・ヒストリー)を再構成することで、「間」流域社会を捉える方法を提示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費のうち、22,074円を次年度に繰り越すことになった。これらは、物品費として使用する予定である。子の繰り越し分を加えた平成25年度のおよその内訳は、物品費172,074円、旅費500,000円、人件費・謝金50,000円、その他100,000円である。
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