研究課題
日本およびマレーシアの研究者との交流を通じて、ラジャン川、クムナ川、タタオ川およびバラム水系のティンジャール川等の流域におけるマイグレーション・ヒストリーについての情報を収集した。いずれの流域においても、流域内の移動と流域間の移動が密接にかかわってきたことが明らかになりつつある。調査対象地周辺に関する歴史資料としては、サラワク官報(Sarawak Gazette)の当該箇所の情報収集・抽出を行った。これらの情報を分析することにより、一定の時間スパンを持った形での流域史・流域交流史を再構成できるのではないかとの見通しを得ることができた。また、各流域における民族の分布と移動履歴、および民族間関係については、上記のサラワク官報以外にも、既存の民俗学的・人類学的・言語学的研究から断片情報を得ることができた。現地調査では、河川地形的な側面との関係から、ラジャン川におけるイバン集落の分布パターンを観察すると同時に、華人やカヤン人との民族間関係についての聞き取りを行った。一方、クムナ川・タタオ川では人類学者・歴史学者との共同調査によって民族別の集落分布に関する情報を整理した。とくにクムナ川流域については、近年の流域開発との関係から集落立地の変化を観察すると同時に、彼らの移動形態と民族間関係および生業の変化について聞き取り調査を行った。これらによって、流域社会の変容過程の一端を明らかにできた。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調に進展している。現地調査で得た特定地域の事例に関する情報と、歴史資料や既存研究で得られた広域情報・断片情報をどのように接合するかという課題は残されているものの、情報量自体は想定していたものを収集できつつある。
現地での交通手段の確保、天候、調査協力者の都合などから、現地調査ではラジャン川、クムナ川での情報収集を優先し、タタオ川については文献資料と協力者からの間接情報に限られてきたので、今後はタタオ川も含めた形での現地情報の収集を試みる。ラジャン川については、引き続き現地調査を行うとともに、収集済みの資料の分析を行い、流域史の再構成を試みる。クムナ川の流域社会変化に関する研究発表(口頭・論文投稿)の準備を始める。また、流域間の関係性について、流域間ネットワーク社会あるいは「間」流域社会という概念で整理できるよう、既存研究を参照しつつ、研究の枠組み構築を図る。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (2件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Equatorial Biomass Society
巻: 8 ページ: 1-14
熱帯バイオマス社会
巻: 14 ページ: 5-13
巻: 13 ページ: 1-6
The Daily NNAマレーシア版
巻: 05034 ページ: 12-12
www.lit.osaka-cu.ac.jp/user/soda/
http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/geo/ja/staff_soda.html