研究課題
これまでの調査研究を継続した。2016年度の調査は、ラジャン川、タタオ川、クムナ川に関する補足的な人文社会情報の収集と、クムナ川、ラジャン川における地形観察を行った。ラジャン川では、現地の研究者と共同で、流域村落の履歴や、自然環境変化に対する流域住民たちの反応・対応に関する聞き取り調査も行った。前年度までに取得した情報をもとに、流域社会の形成と変化のプロセス、移動履歴、民族間関係、自然環境への対応方法などに関する考察を進めた。その結果、ボルネオにおける流域社会は、大河川沿いにおいては、民族間や集落間で戦争と和平を繰り返しながらも、交易や婚姻などを通じて「地域社会」を形成するプロセスが見られることが分かった。一方、異なる流域間を結びつける移動やネットワークも存在してきた。これは分水嶺を越える徒歩移動によって実現されてきたもので、これまでの研究ではあまり注目されていないものである。流域を越えたネットワークは基本的に親族間・同一民族のつながりが強い。つまり、流域という限定された空間内において異民族間をつなぐ地域社会が形成されてきた一方で、流域を越える広域の社会的ネットワークは民族・親族の紐帯に強く依存するという形で、ボルネオ内陸における社会関係は、その血縁的な遠近と空間的な伸縮が反比例する傾向にある。これらの議論を学会のシンポジウム(熱帯生態学会の招待講演)で発表し、異分野の研究者との意見を行った。その成果をもとに2編の論文を執筆した。2016年度以降にいずれも英文で刊行される予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
The Geographical Journal
巻: 182 ページ: not fixed yet
10.1111/geoj.12152
地理学論集
巻: 90(2) ページ: 18-31