ボルネオの内陸諸民族の集落の多くは、河川沿いに位置している。主要河川の流域を上流から下流まで見てみると、複数の民族が混在していることが分かる。そうした流域という空間単位が、「親族」や「民族」という紐帯とは異なる社会的・地域的まとまりを形成する場となってきた。その一方で、流域を越える社会的ネットワークも形成されてきた。流域という限定された空間内においては、異民族間をつなぐ地域社会が形成されてきた一方で、流域を越える広域の社会的ネットワークは、民族・親族の紐帯に強く依存りており、ボルネオ内陸における社会関係は、その血縁的な遠近と空間的な伸縮が反比例する傾向にある。
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