脱工業社化社会とよばれる時代にあり、利益をめぐるグローバルな都市間競争が進む中、シドニーは、「ソーシャルマイノリティ」という立場におかれた住民の政治的・社会的・文化的活動が都市に及ぼす影響に目をつけ、都市の個性的なイメージの創出と観光推進に彼ら彼女らを利用しようとしてきた。 公的な観光案内やガイドブックでは、こうした人々やその特異性が場所の特徴と結びつけて強調されると同時に、国民的アイデンティティ・多文化主義と結びつけて語られる。このような観光推進のあり方は、表面的には社会への包摂に見えるものの、対象となる人々の周辺性によって成り立つという点で問題をはらんでいると考えられる。
|