研究課題/領域番号 |
24520904
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
諏訪 淳一郎 弘前大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40336904)
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キーワード | ルーマニア / ポスト社会主義 / ロマ / 少数民族 / 音楽 / 身体 / 文化資源 / 創発 |
研究概要 |
研究代表者・諏訪淳一郎は平成25年8月中旬から9月下旬にかけてルーマニア・ジュルジュ県ジュルジュ市、ムルシャ村、コマナ村でフィールドワーク4件を実施し、イリナ・グリゴレは調査補助(情報提供者の確保、通訳、映像資料の撮影)を担当した。研究代表者・諏訪淳一郎はムルシャ村での調査でロマのバンドとクラリネットによる共演を行い、身体感覚についてより身体的な知見を得ることができた。 研究代表者・諏訪淳一郎は平成24年度の研究成果に基づいて国際伝統音楽学会で口頭発表を行い(7月)、当該年度での調査データを基にしてアメリカ人類学会において研究発表を行った(11月)。イリナ・グリゴレはアメリカ人類学会において映像人類学に関する研究発表に出席し、研究者との意見交換を行った。 これらの研究から、マイノリティーを下位に位置づけようとする欧州社会のヒエラルキーは、各階層が独立し互いに離接するような機能構造から成り立っているのではなく、ロマとルーマニア社会の接触面から生起する動態によって持続ないし変容していることが再確認できた。そして、両者が接触する境界上に「音楽になる」身体性が重要な役割を果たしていることが明かになってきた。すなわち、ロマの音楽は、ただ単に戦略における経済的な取引やアイデンティティー表出のための道具として機能しているのではない。音楽は文化資源を取り込むというまさにその特性からロマを取り巻く社会環境から文化資源を取り入れ、自家薬篭中に収め、その過程においてマジョリティ社会と接合している。エスノポップを創発する音楽文化資源なるものは、少なくとも物質的ないし形式的材料ではなく、個別の状況に自らを美学的なものとして接合するためのある種の感性であることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに調査の機会が確保され、質的にも十分な調査が実施できた。なおかつ、重要な国際学会で要旨が採択されたことで成果報告も順調に行われ、研究者との意見交換等によって今後の研究への展望が開けた。
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今後の研究の推進方策 |
7月に国際伝統音楽学会において研究報告を行い、引き続いて8月にルーマニアで3週間程度の調査を行うとともに、これまで実施した研究成果を論文にまとめて有力学術誌に投稿する。
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