研究課題/領域番号 |
24520905
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
嶋 陸奥彦 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (30115406)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 韓国 / 農村 / 文化人類学 / 社会史 |
研究概要 |
契冊という韓国の村方文書を利用して、1)一農村の100年にわたる村落社会運営方式とその変遷を再構成するとともに、2)近代化以前の韓国農村研究で用いられていた「自然部落」という概念の再検討を試みるのが本研究の目的である。 初年度にあたる平成24年は、研究の土台となる第一段階の基礎作業、すなわち全ての契の記録を電子ファイルに書き起こす作業を中心に行った。原文書の総量は韓紙400葉を超える膨大なものであり、注釈を施しながら書き起こしたファイルは全体でA4版300ページに達した。この作業の結果、合計8つの契組織のうち、1つは全期間にわたって存続したが、残る7つは時期によって並行的に存在しつつ、植民地期初期、朝鮮戦争終了直後、および過疎化の深刻化した90年代と、40年前後の間隔で改編を繰り返して来た経緯を具体的に確認することができた。ここには村組織の動態的構築性が現れている。また1970年代に現地調査を行ったときに受けた「植民地期以前には二つの村だったものが朝鮮戦争後に合併して一つの村になった」という村人達の説明が非常に複雑な内容を含むものだったらしいことが浮かび上がってきた。これは自然部落概念を再検討するにあたって重要な手がかりを与えるものである。 上記の作業の一部として、平成24年6月末から8月下旬まで国立韓国学中央研究院に滞在した。その際に韓国史学および歴史社会学の専門家と農村の社会史的研究をめぐる意見交換を行い、貴重な情報を入手することができた。また村を再度訪問して現状に関する調査も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の土台となる村方文書記録全体の電子ファイル化という初年度の目標は完全に達成することができた。特に国立韓国学中央研究院に滞在して韓国史学や歴史社会学の専門家たちと意見交換をすることが出来たのは貴重な成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って、平成25年度にはそれぞれの文書の内容の分析を行う。特にそれぞれの組織の存続期間内における構成員の出入り、及び組織が改編されるときの構成員の連続性等について詳細な検討を行う。これは村を構成する世帯の流動性の実態を解析する重要な手がかりとなる。
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次年度の研究費の使用計画 |
韓国における社会史研究資料収集および研究交流、台湾における植民地期社会史研究資料収集および研究交流、欧米におけるアジア研究学会への参加等、国際交流や情報交換のための旅費の占める部分が大きい。
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