研究課題/領域番号 |
24520906
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大村 哲夫 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (30620281)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 宗教者 / 被災者 / 心の相談室 / 宗教心理学 / 質的調査 / 文化人類学 / 臨床死生学 |
研究概要 |
本研究は,東日本大震災を経験して活動を開始した宗教者個人の意識と行動,それに対応する被災者の態度の変化について面接を中心とした質的研究によってアプローチするとともに,超宗派ボランテア「心の相談室」の立ち上げとその動向を中心とした調査研究をすすめている. 平成24年度は,1.調査機材の整備,2.各種メデイアにおける関連資料の蒐集,分析.3.震災関連,およびこころのケアについての資料蒐集と分析.4.「心の相談室」についての資料蒐集と参与観察,関係者への聞き取りと分析.5.宗教者からの面接調査の計画・実施:震災発生時から調査時点までの活動と震災を経験しての心理的変化についてなど.6.被災者からの面接調査の計画・実施:震災発生時から調査時点までの行動と震災を経験しての心理的変化についてなど.7.聞き取り資料の整理・分析.8.日本心理臨床学会において研究発表「死を通して生を考える心理職養成教育-被災地における臨床死生学」および自主シンポジウム「心理臨床と信仰(4)-東日本大震災における危機と宗教性」(企画・司会:大村,話題提供:樋口広思,浜田雅子,飯塚康代,指定討論者:滝口俊子)などを実施した. また成果の一部は2013年3月発行『精神対話論』慶應義塾大学出版会所収の論文「死生観とメンタルケア」として社会心理学者の大橋英寿と共著した.また印度学宗教学会『論集』39号に単著論文「生者と死者をつなぐ〈絆〉-死者ヴィジョンの意味するもの-」として発表するなどした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データについてはまだ十分とはいえないが,概ね順調に進展していると考える.その理由は,本研究は質的研究を中心にしている.特に今回は未曾有の災害である東日本大震災に関わる研究であるため,調査協力者との関係は侵襲的にならないよう最大限の倫理的配慮を行わなければならない.そのためには調査協力者と繰り返し接触を行い,信頼感を醸成した上で無理をしないよう少しずつ聞き取りを行うなど丁寧な調査を行っている.そのため複数の協力者と平行した接触をしつつ,一般的な半構造化面接などではアプローチできない深みのある質的研究を目指しており,現時点では被調査者の数はそれほど多くないものの,今後データ・資料の増加が見込まれる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の準備期間を踏まえ,より具体的に研究を進めていきたい. 1.具体的には宗教者および被災者への面接調査の継続推進を行う. 2.超宗派ボランテア「心の相談室」への参与観察および調査を進めると共に,東北大学実践宗教学寄附講座で実施する「臨床宗教師」についての研究を進めていく. 3.研究を進める上で新たな課題となった被災し犠牲となった児童・生徒の慰霊にかかわる学校の対応について調査研究を進める. 4.日本老年社会科学会,日本心理臨床学会,印度学宗教学会,日本宗教学会,日本ヒューマン・ケア心理学会等で研究発表やシンポジウムを行い,これまでの成果の一端を発表していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
1.今年度適当な機種がなく購入を見送った調査機材を購入し,より本格化する調査に備える. 2.さまざまな学会,研究会に積極的に参加し,同じ領域の研究者はもとより関連する研究者と協力してよりよい成果をあげられるようにする.また研究発表も積極的に行う. 3.研究成果は,纏まったところから論文化し学会誌に投稿していく. 4.震災関係やケアに関する資料の蒐集をさらに進めていく. 5.面接調査に加え,質問紙調査も平行して行うことでより効果的な研究の推進をはかっていく.
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