研究課題/領域番号 |
24520908
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
李 善姫 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), COEフェロー (30546627)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 結婚移住女性 / 多文化共生 / ジェンダー平等 / 東日本大震災 / 地域再編 |
研究概要 |
本研究は、東日本大震災以降、東北の地域再編の中で、結婚移民女性の生活がどのように変化し、地域社会に参画していくのかを考察するのもである。1995年の阪神・淡路大震災以来、震災は地域のマイノリティの実態を考える機会を提供し、減災のためにも共生の必要性を喚起させる重要なきっかけになっている。本研究は、東日本大震災をきっかけに東北の結婚移住女性達が震災後、どのように自分を可視化し、エンパワーメントしていくのかを文化人類学的方法で参与観察し、その動きの中で地域における新たな共生の可能性を提示することを目的とする。 東日本大震災の、被災地に住む多くの外国籍住民は、日本人男性と結婚によって移住した外国人女性である。そのため、今回の震災では外国人の孤立や排除が大きな社会問題として表出されなかった。しかし、震災以前からの調査研究によると、多くの結婚移住女性達はそれぞれの家族や地域社会と適切な関係性を構築できず、ストレスや孤立状態にいることが指摘されている。つまり、移住女性の問題は、社会の中で不可視化されているだけであって、問題がないとは言えないのである。 震災は、その不可視化されていた多くの結婚移住女性達の可視化のきっかけになった。これまで「日本人の嫁」としていた結婚移住女性達が一時本国に避難をすることで、社会は彼女らの「外国人」としてのアイデンティティについて考えるようになり、なお移住女性自身も、震災による被害から復興するために、自分を可視化するようになっている。震災は、地域社会内で不可視化されていた結婚移民女性達の「外国人性」を可視化したのである。 震災によって、自らを可視化するようになった結婚移住女性達が、今後どのように被災地の地域再編に関与し、参画していくのか。本研究では、その過程を記録、分析することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画においては、フィールドワークの中心を調査対象者となる結婚移住女性(外国籍女性)に絞り、雪だるま方式で調査対象を増やしていくつもりだったが、その後の進展で、宮城県の石巻や気仙沼の行政との協力を得ることになり、アンケート調査と個別調査を同時に行うことになっている。 つまり、決まった地域の中での量的調査と質的調査が両方、可能になったことにより、調査の信頼性を確保することができ、なお、貴重なデータを収集することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、宮城県の気仙沼市でのフィールド調査を5月から7月まで行う。被災地で活躍している「外国人被災者支援センター」と「寄り添いホットライン(外国語専用)」の事業にかかわることで、復興支援団体の活動と地域社会との連携、そしてその中での外国籍女性達のエンパワーメントの過程を参与観察していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
○今年度は、研究費は主に調査のための旅費となっており、物品や海外報告のための旅費の支出がなかったため、予定した研究費から未使用額が生じた。2013年度には、調査対象をより広げ、韓国国籍の結婚移住女性のほか、フィリピンや中国など他言語話者にも調査をする予定である。そのため、通訳費や人件費などの支出が見込まれる。 ○フィールド調査のための旅費は、引き続き主な経費として支出する予定である。 ○研究内容の海外報告のための旅費支出も見込まれる(9月頃のカナダー)。 ○パソコンなどの物品の購入を必要とする。
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