研究課題/領域番号 |
24520908
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
李 善姫 東北大学, 東北アジア研究センター, 専門研究員 (30546627)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 文化人類学 / 結婚移住女性 / 共生 / 東日本大震災 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究は、東日本大震災以降、東北の復興復旧が進められている中、結婚移住女性達の社会参画がどのようにはかられているのかを調査・分析するものである。震災後の結婚移住女性達の生活がどのように変わり、地域社会とのかかわりがどのように変化したのかを調査することによって、結婚移住女性たちのエンパワーメントの可能性と地域の中での新たな共生の可能性を提示することが本研究の目的である。 平成24年と25年には、主に宮城県の石巻市と気仙沼市を中心にアンケート調査と聞き取り調査を行った。平成26年度には、今までのインフォーマントの聞き取り調査を深めると共に、福島の中国語継承語グループにも調査を行うことができた。その結果、震災後の移住女性の社会参画には、日本語力と日本人との私的リレーションシップが大きな社会的資本となっていることを明らかにすることができた。 これらの分析を通して、東北に生活している移住女性の類型を大きくキーパソン型、定着努力型、孤立型、放浪型と分類し、特に孤立型や放浪型の移住女性たちの脆弱性を明らかにした。なお、移住女性のより多くが社会参画を果たすためには、彼女らの他のスキールやリレーションシップを認める社会的仕組みが必要であり、そのためにも多文化共生が地域再建の中で取り組まれることの重要さも明らかにした。 今後は、これらの研究をさらに深め、共生する地域再建に必要な社会的資源をより具体的に提言していくつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年度と2013年度に引き続き、聞き取り調査を継続した。インフォーマントには、持続的にコンタクトを取り、震災後の3年間の変化を追っている。なお、石巻、気仙沼、また福島の移住女性のコミュニティと関わりながら、コミュニティの活動も調査・分析を行った。 インフォーマントの方々には、研究の意図を説明し、了承を得た上で進めている。研究成果については、2014年度の間に2回国際学会で発表を行い、雑誌や紀要を通して活発的に成果を発信した。また、2014年7月には日本学術会議のシンポジウムでも報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本来は、平成26年を研究の最終年度にしていたが、震災から4年たった現在、移住女性達のコミュニティに新たな局面が見られるようになっていることで、もう一年その様子を調査することとなった。平成27年度は、移住女性達のコミュニティが解散危機にある宮城県気仙沼と継承語教室をきっかけに地域社会への参画を拡大しようとする福島須賀川の移住女性達を中心に調査研究を行う予定である。 また、これまでの研究成果をまとめ、報告書または単著発刊を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果を発表すべく、報告を予定をしていた国際学会がたまたま日本国内で開催されることによって経費が節約されたと同時に、研究最終年度の報告書作成のための経費が次年度に延長されたことによって、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
移住女性達のコミュニティの解散が検討されている気仙沼を中心に追加の調査を行う他、報告書の作成と発行のために残額を使用する予定である。
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