本研究は、2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災地域における移住女性の被災実態を明らかにすることで、移住女性の脆弱性を明らかにするとともに、震災後に様々な主体によって行われた外国人支援活動により、移住女性の社会参画がどのように変わっていくのかを明らかにする研究である。 研究成果としては、平成24年と平成25年度に宮城県石巻市と気仙沼市で市の協力の基に、外国人住民に対する被災実態アンケート調査を実施し、合計160人のデータを得ることができた。また、被災地の移住女性約60人に聞き取り調査を行った。福島、宮城、岩手3県における移民コミュニティと関わりを持ちながら、震災後の移民コミュニティの成立と活動、そしてコミュニティの危機を参与観察することができた。これらの調査は、5本の論文と5本の研究ノートとエッセーイで発表した。また現在、本研究成果を単著として出版する作業を進めている。 震災と結婚移住女性の被災と復興については、これまでいくつかの研究や報告がなされてきたが、それらのほとんどは、災害弱者としての移住女性、または移住女性の主体性という片面だけが強調されてきた傾向があった。本研究は、それらの結婚移住女性をめぐる一般化したロジックを批判し、彼女らのライフストリー研究を通して見える多様化と階層化を明らかにしている。震災と復興の過程で、キーパーソンとしてコミュニティを作り社会参画を果たす移住女性がいる一方、ますます周辺化する移住女性もいる。彼女らの周辺化の要因としては、移住女性が移住先で獲得・承認される社会的資源の乏しさと、移住者同士が偏った職種で競争しなければならない内部的構造を考えられる。そして、この構造の背景には、ホスト社会におけるジェンダー規範と多様性への認識不足が存在していることを明らかにした。これらの問題是正を実証研究を通して提言した。
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