本研究では、移住先で新たに築いた「伝統的」組織や出身の共同体との関係維持の現状を調べ,ヒンドゥー教徒のバリ人が都市において新たな紐帯を形成しつつ出身慣習村の組織に関わる事例を記述した。 出身地の慣習村の規則に改変をもたらす意図を移住者は表明しないが,出身村では,遠方に移住した成員を慣習村組織内に位置づける組織改変や現代的行政組織に範をとる慣習村運営など,移住者が関わることによる帰結と考えられる変化が観察される。州都あるいは隣島から出身村の行事に参加するという過重にも見える負担を移住者は,起源kawitanとの関係によって説明するので,起源/先祖を意味するkawitanの概念が鍵となると思われる。
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