研究課題/領域番号 |
24520912
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
梅屋 潔 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (80405894)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 妖術 / 「人身御供」 / 人類学理論 / アフリカの王国 / 近代化 / 経済構造の変化 / 国際情報交換(ウガンダ・イギリス) |
研究概要 |
妖術にまつわる事件についての新聞、雑誌、官報などの印刷物の収集と利用可能な文献リストの充実は、国内作業、国外作業ともに、当初予定通り進捗している。H.24.8.15からH.24.9.20までウガンダ共和国において現地調査を行った際には、予定通りマケレレ大学人文社会科学カレッジ副学長エドワード・キルミラ教授、同学部歴史学科オドイ・タンガ教授、1997年来申請者の研究の後援者である前ムバララ大学前学長ラファエル・オウォリ教授、1997年からの調査助手アディン・フランシス氏、2002年から2010年まで申請者の調査助手を務めたポール・オウォラ氏、マイケル・オロカ氏らと連絡を取り、研究完了まで支援が期待できる支援チームを組織した。また、現地での聞き書きにおいて最近の旧ブガンダ王国の領域内に頻発するhuman sacrifice(人身御供)についてと時折報道される「アルビノ殺人」についての言及があった。当該の事件を報道する資料も複数入手した。報道される「人身御供」の件数の多さは、ブガンダ王国についてはゲシーレの報告にあるカメルーンの例とは異なって、王国が妖術の管理機能を担っていない傍証のひとつとして議論された。本研究がターゲットにする論者のいうように、経済状況その他の変革が妖術頻発の引き金であるかどうかはともかく、王国の存在はその歯止めにはなっていないという事実が報告・議論された。母数が少ないので単純な結論は慎むべきだが、一般論として「人身御供」については、ガンダの間で最も多いと考えられていることが判明したが、この一般に流布している傾向が事実だとしてもその原因はいまのところ不明である。またカーボーンでの調査の可否について、アドルフ・オウォラ神父に面会することはできたが、神父自身が高齢であり、事情によりはかばかしい情報は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、ウガンダ現地調査における受け入れ体制は確保され、支援チームも無事組織された。国内外の文献資料の渉猟については進捗状況も良好である。ただし、北東部での現地調査の可否について、情報収集がはかばかしくなく、本年度中に具体的な見通しが得られなかったのは残念である。しかしながら三カ所予定している比較参照点の一カ所のみの事前準備が不十分である、ということであり、その他の予定地はほぼ見通しがついたこと、次年度での挽回が充分可能であると見込まれるところから、「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
北東部の調査の可否について東京外国語大学の河合香吏准教授や長崎大学の波佐間逸博助教などに国内研究者にも早くから(現地調査の準備段階で国内にいるうちから)問い合わせておくべきであった。今後は、調査の準備段階で、文献渉猟だけではなくて現地でのネットワーク構築についても心を砕くべきである。その上で適当な人物の仲介で、ウガンダ北東部での調査可能性について具体化するべきである。また、本年度は、現地においても、支援チームの組織に集中するあまり、旧ブガンダにおける調査についても、インフォーマントを国内にいるうちから探す努力をしていなかった。すなわち、現地での作業を現地で完結したものとして、渡航前の準備が若干不十分だったことが、研究の進捗の足かせの一つとなっていることを反省し、現地調査に向けた十全な準備を心がけるべきである。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の使用にかかる方針が間違っていたわけではないので、昨年度同様に使用する予定である。ただし、当初予定よりも旅費が膨らみ、人件費が比較的見込みよりも支出額が低かったという傾向を鑑みてしかるべき比率に調整する予定である。
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