研究課題
2013年8月、マンチェスター大学で行われたIUAES2013においては、本研究の中間報告としてウガンダの妖術とキリスト教との接合と解釈の実態を近代化との関係で、ウガンダ東部の一家族について焦点を絞って論じた。それに続く2013年9月の現地調査では、研究支援チームのとりまとめであるエドワード・キルミラ教授、ラファエル・オウォリ教授に面会した他、オドイ・タンガ教授、アディン・フランシス、ポール・オウォラ、マイケル・オロカ氏ら支援チームと意見交換を行った。オウォラ神父はカーボーンから引退していることがわかったので別のコネクションを辿る必要が明らかとなった。首都カンパラでの聞き書き、新聞記事の蒐集、大学等でのライブラリーワークは予定通り進捗している。その後の村落地域(トロロ県)における現地調査では、昨年度から継続中の現地語―英語―日本語のテキスト翻訳と整理に多くが費やされた。これまでの暫定的な結論としては、当初の仮説「王国が妖術をコントロールしている」のは、カメルーンの特殊な事情であり、すくなくとも、ウガンダのガンダ王国においては、「王国」が「妖術」との関連で語られることが皆無であるうえ、「妖術」に纏わる残虐な殺人事件(human sacrificeと呼ばれる)や、告発など法に触れる事案はむしろ旧ガンダ王国と考えられている中央部に頻発していることが、首都カンパラでの複数のインタビュー情報からは、指摘されている。また、牧畜社会の論理が残存するカラモジャ地域では、妖術よりも呪詛(curse)が主なモチーフとなっており、これは社会的に正当性が担保されている概念であることから、ゲシーレらが近代との関連で分析する、反社会的な、事件性のある「妖術」の事例と同列に並べて考えることは不適であるとの感想を持つに至っている。さらなる調査によってこれらの暫定的な考察を資料的に跡づけていきたい。
2: おおむね順調に進展している
予定していた比較参照点3地域のうち、他の2地域において、新聞記事およびインタビューを通じておおむね蓋然性のある見通しが得られ、また結果的に現地を訪問できなかった北東部(カーボン)についても解釈のよすがとなる仮説が得られたため満足すべき成果があがっていると認める。課題としては、参照点3つの内のひとつであるカーボーンでの現地調査には、当てにしていた紹介者の移転により着手できず、王国と妖術との関係においても王都における公式見解など決定的な結論的データが得られているわけではない点が指摘できる。まず前者については、今後短期であっても、適切な案内者のもと(短期の場合には、手つかずの地域に自ら調査を着手するのは現実的ではないため)、実現可能性が模索されるべきである。後者については、この場合必ずしも公式的見解が有効というわけではない。その方面での資料の入手可能性は継続的に模索するとしても、公式、非公式を問わず、次年度もさらなる資料の充実は依然として期待できるであろう。
継続してこれまでの方針のもと、資料収集に鋭意専心する。達成度において指摘した北東部での調査、あるいは北東部出身者へのアクセス可能性を模索するとともに、得られた仮説を補強ないし、検証するための資料を収集したい。もちろん矛盾するデータがあればそれについても配慮する。この点については、かねてから予定していたとおり、長崎大学の波佐間氏との連携が望まれる。また首都での滞在時間を若干長めに設定することも、最終年度であることを考慮すると有効かもしれない。
予定外の差し戻し金があったため。計画を修正し、当初計画で手薄だった物品費に充当する予定である。
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