妖術にまつわる事件についての新聞、雑誌、官報などの印刷物の収集と利用可能な文献などの情報を通じて、また、ウガンダ共和国において現地調査を行った際に蓄積した民族誌資料を検討した。現地での聞き書きにおいて最近の旧ブガンダ王国の領域内はhuman sacrifice(人身御供)にまつわる事件が頻発していることが明らかとなり、近隣に比してその数が著しく、ブガンダ王国についてはゲシーレの報告にあるカメルーンの例とは異なって、王国が妖術の管理機能を担っていない傍証のひとつとなった。また、牧畜社会において根強い「呪詛」などの正当呪術の存在がこうした猟奇殺人の歯止めになっている可能性も見いだされた。
|