研究課題/領域番号 |
24520913
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
関 恒樹 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (30346530)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 文化人類学 / 社会政策 / 統治性 / 都市貧困 / フィリピン |
研究概要 |
フィリピンにおける条件付現金給付の事例から、途上国における社会開発と統治性の問題をいくつかの国内国外の学会にて発表した。7月にはフィリピン研究会全国フォーラム(京都大学)、11月には国際フィリピン学会(ミシガン州立大学)などで調査結果を報告した。それらの報告をもとに、これまでの調査結果と本年度の調査に基づき、これまで得られた知見を「スラムの貧困統治にみる包摂と非包摂-フィリピンにおける条件付現金給付の事例から」『アジア経済』54巻1号にまとめた。そこで明らかになった知見は以下の通りである。 調査地であるマニラ首都圏マリキナ市において実施されている条件付現金給付の事例からは、スラムの住民組織、コミュニティ、そしてNGOなどの動員による住民の貧困統治と包摂の側面が観察された。しかし、ローカルな生活の場における包摂は、常にその陰画としての包摂されざる者たちを生み出してもいた。そのような包摂されざる者とは、特定の包摂の制度から排除された者、それを拒否する者、あるいは抵抗しつつ別の包摂のされ方を望む者、さらにはそのような制度を読み替え、住民主導の「下からの」包摂を実践する者など多様な存在であった。 今後も引き続きフィリピンの事例に基づきつつ、社会政策の統治性が生み出す包摂/非包摂の多様なせめぎ合いを、諸アクター間の微視的相互交渉に注目しつつ明らかにすることが必要になる。その作業を通して、今日の非西欧諸国、あるいは途上国における都市貧困の統治において、いかなる性格の権力が作用し、特定の権力関係の下で、住民はいかなる主体となることを要請されているのか、そしてそのような要請が住民の日常生活にもたらしたものは何かといった、より普遍的な議論に対して示唆を与えることが重要になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は基本的な文献資料の読み込み、予備的現地調査を予定していた。途上国の社会政策と統治性に関する基本的文献を収集、閲読し、研究の基本的フレームワークの構築に努めた。また、8月にマニラを訪問し、スラムにおける条件付現金給付政策の実施過程に関し観察、インタビューを行い、予備的資料収集を行った。これらの成果に基づき、国内外の学会にて研究報告を行い、論文をまとめることが出来た。このように、研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は9月に3週間ほどの集約的な現地調査をフィリピンのマニラ首都圏にて実施する予定である。地方政府、市民団体、住民組織など条件付現金給付政策のステークホルダー達に集約的なインタビューを行うと同時に、政策の実施過程の各段階において微視的な参与観察を行う。この調査に基づき中間的に知見をまとめ、11月のシカゴにおけるアメリカ人類学会、そして2月の京都において開催される国際フィリピン学会などで成果報告を行う予定である。なお、国際フィリピン学会では、フィリピンのグローバル化、社会政策、統治性、NGO研究など関連するテーマを調査する研究者を招聘し、パネル発表を行う予定。なお、引き続き関連諸文献、資料の収集購入も行う予定。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年9月、2月にマニラにて現地調査予定。6月の東京の日本文化人類学会、8月のマンチェスターでの人類学民族学連合大会、11月のシカゴでのアメリカ人類学会、2月の京都での国際フィリピン研究会などにおいて研究発表を行う予定。
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