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2014 年度 実績報告書

途上国の社会政策にみる統治性と主体構築―フィリピンの都市貧困層地区の事例から

研究課題

研究課題/領域番号 24520913
研究機関広島大学

研究代表者

関 恒樹  広島大学, 大学院国際協力研究科, 准教授 (30346530)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード社会政策 / 社会開発 / 統治性 / ネオリベラリズム / 都市貧困 / フィリピン / 文化人類学 / リスク
研究実績の概要

研究代表者は、マニラ首都圏マリキナ市のスラム住民を対象とし、不法占拠者への土地供給や所得補助、あるいは自然災害への復興支援などの社会開発プログラムと住民の反応について調査を行ってきた。明らかになったことは、諸プログラムが、政府によるセーフティネットの提供ではなく、むしろ「自助努力」や「人的資本への投資」といったネオリベラルな理念を標榜する一方、実際の資源分配はパトロネージ(庇護)とクライエンテリズム(忠誠)の規範に基づきつつ行われており、また貧困層の間ではそのような規範の希求が根深く存在するということである。パトロネージとクライエンテリズムとは、貧困層と政治的エリートの間に見られる、票と財・恩恵の個別的かつパーソナルな交換関係であり、フィリピン社会に卓越するインフォーマルな政治経済制度であると規定できる。このような制度は、汚職と腐敗の温床、市民社会の発展を妨げる障害、そして「弱い国家」の元凶として、特に国内のミドルクラスから常に厳しい批判に晒されている。その意味でこの制度は社会の分断と断絶を再生産する脆弱性を内包する。しかしその一方で、貧困層にとってこのような制度は、持つ者と持たざる者がいかなる関係にあるべきか、両者はどのように共存すべきか、そして両者の間で資源はいかに分配されるべきかを示す規範を示唆している。それは近代的政治経済制度の確立とともに周縁化されるべき過去の遺物ではなく、むしろ国によるフォーマルな制度や公助に頼ることの出来ない社会に現出する今日的リスクと不確実性の中で生成するレジリエンスを示唆している。本研究では、このような脆弱性とレジリエンスの複雑な絡み合いに注目した民族誌を成果として公表した。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (2件) 図書 (3件)

  • [学会発表] Reconfiguration of “the Social” and the Government of Poverty in the Philippines: A Case of Conditional Cash Transfer in Slum Community of Manila2014

    • 著者名/発表者名
      Seki, Koki
    • 学会等名
      American Anthropological Association
    • 発表場所
      Washington D.C. USA
    • 年月日
      2014-12-03 – 2014-12-07
  • [学会発表] Neoliberal Poverty Alleviation, Moral Discourse, and Mutation of “the Social”: A Case of a Slum Community in the Philippines2014

    • 著者名/発表者名
      Seki, Koki
    • 学会等名
      International Union of Anthropological and Ethnological Sciences
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県)
    • 年月日
      2014-05-15 – 2014-05-18
  • [図書] Visayas and Beyond: Continuing Studies on Subsistence and Belief in the Islands2014

    • 著者名/発表者名
      Seki, Koki
    • 総ページ数
      153
    • 出版者
      Center for International Studies publications, University of the Philippines, Diliman
  • [図書] Palawan and Its Global Connections2014

    • 著者名/発表者名
      Seki, Koki
    • 総ページ数
      392
    • 出版者
      Ateneo de Manila University Press
  • [図書] 現代アジアの女性たち-グローバル化社会を生きる2014

    • 著者名/発表者名
      関恒樹
    • 総ページ数
      370
    • 出版者
      新水社

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公開日: 2016-06-01  

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