フィリピンのマニラ首都圏におけるスラム住民を対象とし、都市貧困層住民への所得補助事業としての条件付現金給付プログラムに関して、調査を行った。調査は、住民へのインタビューやプログラム施行過程の参与観察などを中心に行われた。本プログラムは、現金収入の限られた住民たちに、一定の購買力を与える効果はある一方で、受益者に要求されるさまざまな条件が、住民たちに必ずしも受け入れられていない様子も明らかになった。本事例は、貧困というリスクの管理、統治において、公助が脆弱な途上国において、自助に依存した支援が展開されるときのさまざまな矛盾を示唆している。
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