平戸諸島の民俗信仰について、様々な民間宗教者の観点からその仕事の内容を見た。調査から言えることは宗教者の活動に重なりが見られることである。盲僧、修験、仏教寺院、ホウニン、かくれキリシタン、神官の順に見ていく。まず、盲僧は主に三宝荒神の祓いをし、年中行事、人生儀礼にも関わる。講経も行い、稲荷、地鎮祭、易による占いなども行う。次に修験は初祈祷、荒神祓い、講経をするほか臨時のご祈祷、護摩祈祷などをする。稲荷や死霊様のまつりをする。次に仏教寺院は春秋の施餓鬼、十一月に冬至冬夜といって先祖をまつる。寒行といって、荒神を祀ることもする。家祓いをする。講経はするところもしないところもある。次にホウニンは屋敷神を拝む宅神祭(講経とも呼ばれる)、地鎮祭、車の祓い、稲荷の祭祀、病気祈祷、占いなどをする。次にかくれキリシタンは同じ信者だけであるが、屋(家)祓いを行う。かくれキリシタンは御前様と呼ばれるかくれの神を祀るが同時に家の中に天照大神、先祖、弘法大師、荒神様を祀る。病気のまじないなどもした。また、ハッタイ様などの農耕行事もダンジク様などの大漁祈願もした。キリシタンの祈祷の文言の中には、安満岳が含まれるほか、生き霊、死霊などの文言があり、これらホウニンや盲僧、修験などが祀るものがある。死者に対しては、悪いかぜがついたとして、「カゼ離し」をする。神官の活動も重なっている。神官は家祈祷もすれば、荒神祓いもする。川祭りの導師をし、札(大麻)を配り、船の祓いなど様々な祈祷をする。神官の活動範囲は広い。この様に宗教者の観点から見ても、重層性、混融性が指摘出来るが受容者である村人からも重層性、混融性が指摘できる。平戸諸島の人々がホウニンと呼ぶ範疇の中には、盲僧や修験、ホウニンの三者が含まれる。平戸諸島の民俗信仰は宗教者の側からもまた、信者の側から見ても、重層しており、混融しているというべきである。
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