本研究は、贈与を通じて異人を歓待する習俗に見られる他者の受容と他者の排除の分水嶺を明らかにする人類学的フィールド調査を実施すると同時に、西洋出身の研究者が主導となり議論が重ねられてきた贈与論とホスピタリティ(歓待)に関する研究の系譜を批判的に検討することを目的とする。具体的には、西洋思想における贈与の観念を踏まえながら、現代のインド社会において異人として在り続ける現世放棄者ヒジュラへのダーナ(贈与)の慣習、巡礼地での喜捨の意義に関する考察を行い、異人を排除することなく享受する習俗としての歓待のあり方と、そこで創発する贈与の意義を明らかにした。
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