11月に10日間程度のフィールドワークを行いデータを集めた。前回の調査から1年余り経ていたため、この間起こった変化に焦点をあてた。特に、ゴム・プランテーションがその後どうなったか、その労働条件や環境がどう変化したのか、また労働者たちがそこでの労働に対し、態度や考え方を変化させているのか、また地域住民たちの見方に変化があるのか、さらには彼らの生業一般に変化があったのかどうかを中心に調査した。その結果、労働者やその家族のゴム・プランテーション労働やゴム会社に対してもつ見方や態度はそれほど変化していないことがわかった。ゴム会社のほうでも、前年に比べてその方針や労働条件を大きく変化させていない様子であった。ゴム会社の方針が安定してきたことで、地元住民のほうでも見方や態度を安定させていると考えられるのかもしれない。労働者に対する報酬は、隣国タイでは大幅にゴム価格が下がっているため、これが大きく減少し、労働者の大きな不満につながっているが、調査地では大幅な報酬の減額には至っていない。11月という時期が乾季で、同時にラテックスが大きく減少する時期には入っていないため、労働者たちにとって一定の満足を得られる報酬が稼げているからかもしれない。いずれにせよ、多少の不満はあるにしても、労働者とその家族がかつてのような激しい怒りを見せることはなかった。 またこれと同時に、一部の住民の間で新たな作物の栽培や事業に乗り出す動きが認められた。代表的な作物はカシューナッツであり、これはゴム会社が数年前から栽培しているのを真似たものと考えられる。また事業とは、プランテーション労働で稼いだ報酬を貯めてトラックを購入し、これを使って商売を始めようとする動きである。こうした動きは地元住民が完全にゴム園労働に依存せずに、一定の自律性を保とうとする意思とも受け取れる。今後の動向から目が離せない。
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