研究課題/領域番号 |
24520924
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
川崎 一平 東海大学, 海洋学部, 教授 (10259377)
|
研究分担者 |
山田 吉彦 東海大学, 海洋学部, 教授 (90512616)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 国境離島 / 海洋政策 / 公共性 |
研究概要 |
本研究の開始初年度として,本研究活動の開始を告知,より多くの知見を得るために「海洋開発シンポジウム」にて発表をおこなった.本研究申請者及び分担者が,本研究開始前に有していた知見を当シンポジウムにて報告し,地方自治体における海洋政策の進捗状況に関して質疑に応答した.その結果,本研究テーマである「国境離島」の定義づけ,地域比較の必要性に関する指摘を受けた. これらの示唆を活かし,若干の計画修正をおこなった.東アジア海域,特に東シナ海においてEEZを隣国と接する島嶼地域の現状を把握,鹿児島県奄美地方,及び長崎県五島地方において,地方公共団体等を対象として,島作りと海洋政策との関連について調査をおこなった.その後,石垣島で漁業従事者を中心にして,ライフヒストリー法に基づく調査を実施,生業形態と海洋政策に関する意識・態度の差を調べた. 奄美地方においては,奄美豪雨に見られたような局地的災害において渡船・遊漁船が連携し海上から被災村落に救援物資の提供をおこなっていたことが明らかとなった.こうした救援活動は行政指導によるものではなく,民間団体の呼びかけによるものであって,新しい公共と呼ぶべき救援運動体が成立したことを物語っている. 一方,五島列島では,悪天候時に島に避難する中国漁船の数が近年大型化しまた数も増加していることから,汚水垂れ流しなど,島の環境破壊を引き起こしていること,また近海間近にまで200隻を超える中国漁船団が操業をおこなっていることから漁獲魚種の変化や減少が生じていることがわかった. こうした知見を得て,主たる研究対象地である石垣島の現状と島民の意識を探った結果,リーフなど沿海域でマイナーサブシステンスとして漁を営む島民と尖閣諸島付近まで漁を営む「漁師」との間で差異があることもあきらかとなった. 国境離島をキーワードとして比較の視点を持ち得たことは,意義がたかい.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国境離島の定義づけを確認し,東シナ海域における離島調査を実施したことにより,計画修正した.その結果,議論をふかめていくにあたり,研究の質を高めることとなった. しかし,その反面,石垣島自体での調査に集中する時間が少なくなった.以上のことから,量的にはおおむね順調に進展していると評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画では,石垣島の集中的な調査のみを考えていたが,学会での意見交換によって指摘されたように,東シナ海海域でのダイナミックな動きと住民の対応について,できるがきり詳細な記録が必要であるとの認識をえた. 今後は,石垣島を中心に調査を実施していく計画であるが,先島における周縁離島の調査も,同時に進行させて行くことにしたい.とくに与那国島等,台湾と隣接する海域をもつ島の調査が必要となる.また与那国島だけではなく,沖縄本島での民間団体等の活動も視野に入れて,丹念なミクロ調査と海域における面的な比較を徹底させていくことが,今後の方向となる.
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし.
|