本研究は、イギリスのパキスタン系2世の女性への聞き取りと参与観察の結果をもとに、多文化社会のケア(とくに高齢者介護)にみられるジェンダーとエスニシティの相互作用、およびそれが社会の多元化に与える影響を明らかにすることを目的とした。調査からは、ケアをめぐる意識と実践に変容と継続の双方がみられ、女性たちが公的支援や有償ケアを親族内での無償のケアと組み合わせつつ、新たなケア実践を構築しつつあることが明らかとなった。そのプロセスで、エスニック集団間の境界が強化される一面もあるが、一方で女性たちは非親族や移民社会外での資源や関係性を動員し、それにより、多文化社会内の新たな社会関係の動態が生まれている。
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