本研究は、東京の病院の緩和ケア病棟、および岡山の診療所とその周辺地域におけるフィールドワークに基づき、緩和ケアを受けている患者とその家族およびケア提供者の経験を、身体感覚に焦点を当てて明らかにすることを目的とした。その結果、緩和ケアを受ける人の尊厳の維持がその人の身体感覚的経験と深く関係していること、そしてその感覚的経験はその人のおかれた社会文化的文脈に埋め込まれていることが示唆された。また、緩和ケアの現場では、多様な行為者が患者とその家族の感覚に多面的に訴えるべく、様々な方法でケアの環境と状況をつくり出していることが明らかになった。
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