研究課題/領域番号 |
24520932
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
小池 淳一 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60241452)
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研究分担者 |
青木 隆浩 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (70353373)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 手作り / ろくろ / 木工 / 桶樽 / 流通圏 / 消費 |
研究概要 |
平成24年度は鳥取、長野における職人への聞き取りや関連情報の収集に努めた。また中国地方や東北地方における桶樽、木工に関する職人の所在や先行する調査報告書類の分析検討も進めた。 「手作り」という語に含意されるのは、素朴な手業(てわざ)というよりも、オーダーメードにより、顧客の要望に合わせる製品作りという感覚であることが聞き取り調査から判明しつつある。しかしこれは木工に関するもので、それ以外の職人技術に関しては、より詳細かつ丁寧に聞き書き資料を蓄積していく必要がある。 なお、当初計画していた技術の写真および映像による記録については工房の環境や調査者との信頼関係の構築の程度などの要素が複雑に絡み合い、慎重に実施する必要があることが調査の過程で了解され、実施に至らなかった。また木工製品の製作に用いられる道具類については、ろくろに着目しているが、ろくろだけではなく、関連するウマ(ウシ)といった手置き台に類する道具、切削に用いる刃物のバリエーションにも注意を払うべきであることが調査によって明らかになってきた。 こうした当初の計画を若干、変更し、検討すべき用具や工程、材料毎の差異について机上の計画にこだわることなく調査検討を進める必要があることが判明したということが最大の成果といえるかもしれない。また木工の場合、稀少な素材に関する植物学的な知識ばかりではなく、加工や切削、圧縮等の作業時における性質が共有される場合があることが判明した。これは製品そのものが流通し、消費(使用)される場における知識にも通底し、「手作り」を構成する重要な要素ということができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
職人の技術を映像・写真等によって記録し、分析するという点において調査研究がそれほど進展しなかった点が最大の問題である。しかし、これは職人との信頼関係を構築し、当調査研究の意義を理解してもらうことによって、今年度は可能になるものと期待している。 ライフヒストリーやライフストーリーの手法によって職人の技術の習得過程や技術観を収集し、分析することが、映像・写真記録に先行、もしくいは並行して行われるべきであることが判明した。この点について、特に文房具をはじめとする諸製品の比較や分析と連携して進めていくべきことも課題として浮上してきた。このように実際の調査によって見えてきた新たな課題にどのように取り組むか、当初の計画とのすり合わせが必要になってきている。
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今後の研究の推進方策 |
特に大きな変更はないが、木工品その他の製品を聞き取り調査の際の参照物(具体的に製品を見ながら説明を聞く)として購入し、本研究が終了後には勤務先に展示・研究用資料として収蔵することを視野に入れるべきであると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
製造の工程の調査にかなりの研究費をあてる予定であったが、そればかりではなく、上述のように製品を購入し、製作した品物に即して聞き取りをさらに深めること、製品そのものから引き出せるデータについても留意することが必要でる。 概ね計画通りに進めることができようが、昨年度から繰り越した予算も含めて積極的な調査研究を心掛けたい。
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