本研究は、近世前期(17世紀~18世紀前期)の日本の支配体制をめぐる上方町人達の意識構造を、それを最もよく表す近松門左衛門の世話浄瑠璃とその関連テクストの分析を主たる手掛りとして、当時の国際関係と関連づけて解明することを試みたものである。近世前期には、幕府の「法」による規律が強化され抑圧的な体制が確立してゆくが、上方町人達は、こうした体制に対する強い抵抗感と自立的な商業世界の形成の難航から、海外への関心を高め自由な貿易を求めた。しかし、18世紀後期になると、その意識は急激に変化し、体制への抵抗が薄れてむしろ体制側の価値観に接近する一方、対外観も大きな変容を遂げることが明らかになった。
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