研究課題/領域番号 |
24530004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石井 三記 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60176146)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 近代法 / フランス / 治安判事 / 調停 / 法社会史 |
研究概要 |
19世紀フランス近代の司法制度の内実を社会史の手法を用いて、法制・担い手・運用の視点から解明することを目的とする本研究では、まず出発点としての1790年8月16-24日の司法制度に関する法令を革命期の議会議事録などの資料を分析することで、当初は「裁判官一般」から始まる章立てが審議過程において「仲裁」を冒頭におくことが決められたことに示されるように、裁判が司法制度における、いわば氷山の海上に浮かぶ一部であって、その下には仲裁、調停への広大な領域が広がっていることに注目が必要であり、これは近年の司法史におけるアンフラ・ジュディシエールへの問題関心の注目と重なることが明らかになった。 平成24年度は、日本ではまだ所蔵されていない、主としてフランスの大学にそろっている19世紀以来の学位論文などの高い水準の研究文献のほか、同時代の一次史資料の収集を現地にも赴いて実施してきた。その際に、従来、さほど学術的とされてこなかった文献、具体的には、広い意味での法律実務家向けに出版されていた法律事典類が当時の法制の実態を知る上で便利であり、革命期から19世紀を通じて治安判事向けのマニュアルや公証人向けの事典などがあることがわかってきたので、このような資料を用いることで司法制度の運用実態に切り込む糸口ができた。 本研究課題の性格上、フランスの研究者とのネットワークの形成は重要であり、平成24年9月にパリ高等師範学校のアルペラン教授をお迎えし、「モンテスキューの作品における法と正義」と題するセミナーを開くことによって司法の問題を近代法の母体となる啓蒙思想の代表的人物であるモンテスキューにおいて検討することができたことは意義深いものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第1年目としては、資料の収集等が重要な位置を占めていたが、フランス革命期の議会議事録などについてはすでに集めることができ、その資料を分析することによって、出発点としての初年度の目的はおおむね達成し順調といえる。今後の研究遂行に必要な文献資料も精力的に集めてゆく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は、当該研究課題に関係する文献・史料を精力的に収集閲覧そして分析をし、法制度レヴェルでは19世紀後半から最終的には治安判事が廃止される20世紀のまでを視野に入れて研究を進めるようにする。その際に、21世紀の転換期にフランスで実施された司法制度改革である近隣裁判官の活動等にも留意して現代的な問題意識をもつことも忘れないようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず、今後も本研究課題に関連する西洋法制史関係文献資料を集めていくことが重要である。とくに、古書の類で当時の治安判事のマニュアルが司法制度の運用実態を調べるうえで便利であることがわかったので、その購入ないし現地図書館文書館で撮影等を実施する。 平成26年にはフランスのリール大学にある司法史研究センターと協力して名古屋大学で日仏司法史研究シンポジウムを開催するべき準備しており、そのための謝金等の使用も計画しているところである。
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