研究課題/領域番号 |
24530004
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石井 三記 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60176146)
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キーワード | 近代法 / フランス / 司法史 |
研究概要 |
本研究は、近代的な司法制度を法制のレヴェルにとどまることなく、その実態や担い手のレヴェルにまでおりて、近代司法制度の実像に迫ることを目的内容としている。その際に、「法令」「担い手」「運用」の観点からの解明を目指している。 今年度は、とくに2014年1月25日に名古屋大学で開催した日仏シンポジウム「司法史研究の比較可能性」の責任者としての準備に追われた。本シンポジウムはフランス側から7人の報告者を招き、合計12本の報告を含むもので、フランス・アンシャン・レジームにおける判例集の役割、教会裁判所での姦通事案での男性の処罰、江戸幕府下の裁判の実務、地方パルルマン法院の民事裁判の事例、19世紀フランスの労働審判所での労使紛争調停、ドイツの営業裁判所との比較、明治前期の労働紛争のあり様、フランス・アンシャン・レジーム下の決闘の処罰、恩赦制度の比較法制史、明治期のコンセイユ・デタ制度導入の構想、20世紀前半フランスの売春統制などのヴァラエティあふれる内容となって、法制史の学界でははじめての本格的な日仏シンポジウムの開催となった。このシンポジウムは、とくに前もって報告原稿の日仏対訳ないし日英対訳を進めることで、一方的な報告におわらない中身のある討論ができた。このシンポジウムから得られたことは、「法令」の観点からは比較という方法が重要であることを再確認でき、「担い手」の観点からは判例集の作者の問題を検討した報告からのインスピレーションとして研究対象とする文献の作者や出版社にまで視野を広げることの示唆を得ることができ、「運用」の観点からは民事以外の労働紛争などの問題解決を日独仏で概観することができた点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は資料収集も順調で、とくに国内の大学等に所蔵していない19世紀後半フランスの法制史関係の雑誌購入することができ、司法史研究にとって重要な論文が収録されていて、分析も進めることができ、さらにリール第2大学司法史研究センターとの日仏シンポジウム「司法史研究の比較可能性」を2014年1月に開催することができたことが特筆に値すると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は現在までに収集してきた文献の分析を進めていくとともに、6月末にパリ高等師範学校のアルペラン教授を招いての法制史のセミナーを開催することもあり、フランスでの最新の研究動向にも注意をしながら、近代フランスの調停制度の使われ方が我が国の従来の研究では考えられていなかったくらいに量的にも質的にも裾野の広いものであったことことを示していきたい。そのために、ひとつは統計的な研究の知見を紹介するとともに、ミクロ的な、換言するとナラティヴな個別事例に注目することで、たとえば調停の場合には女性が当事者として登場することなどジェンダー研究にも資するような事例分析をしていく。
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