本研究は、近代フランスの司法制度に焦点をあて、近代法の内実を法制度のみならず法の担い手や紛争解決の法文化・法思想にまで対象の幅を広げて法社会史的に探究しようとするものである。一般に西洋近代法のイメージは、裁判による紛争解決制度が全国に均質的なかたちで拡張し、法規範による規律化ないし合理化の進展として描かれているが、実際はフランス革命から20世紀のなかばまで治安判事が調停制度の担い手として活動していたのであり、19世紀中葉には勧解制度の利用がピークに達する。このような問題関心から明治日本の近代法制度も検討でき、比較司法史研究への一歩を踏み出すことができると考える。
|