研究課題/領域番号 |
24530005
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
青嶋 敏 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10202483)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 沖縄条項 / 民法施行法10条 / 民法施行法予決議案 / 民法施行法決議案 / 民法施行法案 / 場所に関する民法の効力 / 不動産登記法決議案 / 法典調査会 |
研究概要 |
本年度の研究実施計画に従って、国立国会図書館及び国立公文書館での文献資料調査並びに法典調査会や帝国議会の議事録の検討等により民法施行法10条(沖縄条項)の制定過程を研究した。 その結果次の諸点が明らかになった。(1)法典調査会での民法施行法案策定の当初段階の予決議案(明治30年4月)に沖縄条項の原型となる規定が存在したこと。(2)その後同年10月の決議案に至るまでは沖縄条項に相当する条項は規定されていなかったこと。(3)法典調査会から内務省への照会に対して明治30年11月に内務次官から「沖縄県ニ民法施行ニ就キ意見ノ有無嘗テ御照会有之候処同県土地ニ関シテハ当分民法ヲ施行セサルコトニ致度」との回答があり、これを受けて沖縄条項が復活したと考えられること。(4)帝国議会衆議院における民法施行法案の審議では沖縄条項は全く議論されず、他方貴族院では政府より議院法28条但書による緊急事件の議定要求がなされたため実質審議抜きで可決されたこと。(5)沖縄条項に関しては民法施行直後に刊行された民法の解説書中で場所に関する民法の効力の問題として記述されたが、沖縄条項の廃止後その記述が削除されたこと。(6)並行して行われていた不動産登記法案策定の初期段階の決議案(明治29年7月)に「本法ハ民法施行ノ日ヨリ施行ス但沖縄県伊豆七島及ヒ小笠原島ニハ当分ノ内之ヲ施行セス」との条項が存在したが、但書はその後法案から削除され、帝国議会における不動産登記法案の審議では沖縄条項の存在を前提として不動産登記法は当分の間沖縄県に施行されない旨の答弁がなされたこと。(7)民法施行法に関する唯一の実質的な解説書である宮田四八著『民法施行法講義』は「本条制定の際大に議論ありて起草委員も頗る其取捨に困む程なりし」と指摘していること。 沖縄条項の制定過程をめぐる以上の諸点は従来の研究では論じられていない知見である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度における研究の着手が遅れその実施が年度後半に偏ったため、平成24年度に予定していた、東京大学法学部所蔵穂積陳重博士旧蔵法典調査会関係文書及び法政大学図書館所蔵梅謙次郎博士旧蔵法典調査会関係文書の調査検討ができなかった。これにあわせて平成24年度における研究で収集した文献資料を電子情報に入力する作業を平成25年度に先送りした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、当初の研究実施計画に従って、沖縄条項の削除過程について考察を進めるとともに、平成24年度に一部未実施となった沖縄条項の制定過程に関する文献資料の調査検討を補充的に行う。 すなわち、帝国議会の議事録等によって明治39年の「民法施行法中改正法律案」の審議状況を検討するとともに、国立公文書館所蔵「民法中不動産上ノ権利ニ関スル規定ヲ沖縄縣ニ施行スル法律案」関係資料、国立国会図書館議会官庁資料室所蔵「民法施行法中改正法律案」関係資料、法務図書館所蔵民法施行法関係文献等を調査分析し、さらに平成24年度に実施できなかった東京大学法学部所蔵穂積陳重博士旧蔵法典調査会関係文書及び法政大学図書館所蔵梅謙次郎博士旧蔵法典調査会関係文書の調査検討を補充的に行う。そのため、平成25年度においては年度当初から研究に着手し、研究計画を着実に推進する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上述のように平成24年度中に予定していた文献資料の調査の一部が未実施となったこと及び平成24年度における研究で収集した文献資料の電子情報としての入力作業を先送りしたことが主たる理由で、研究費の次年度使用額が生じた。この次年度使用額については、平成25年度に請求する研究費とともに、上述の平成25年度の研究推進方策に沿って使用していく。
|