研究課題/領域番号 |
24530005
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
青嶋 敏 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10202483)
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キーワード | 沖縄条項 / 民法施行法10条 / 民法施行法案 / 民法施行法中改正法律案 / 民法中不動産ノ権利ニ関スル規定 / 沖縄県土地整理事業 |
研究概要 |
本年度研究実施計画に従って、国立国会図書館、国立公文書館、京都大学法学部図書室及び法政大学図書館での資料調査と帝国議会議事録等の検討により、民法施行法10条(沖縄条項)の制定過程の補充研究及び削除過程の研究を行った。 その結果次の諸点が明らかになった。1明治36年11月、司法・大蔵・内務3大臣が「民法中不動産ノ権利ニ関スル規定ヲ沖縄県ヘ施行スル法律案」の閣議決定を稟請した。2同法案は「民法中不動産上ノ権利ニ関スル規定ハ沖縄県ニ之ヲ施行ス」という内容で、その提案理由は「沖縄県ニ於ケル土地整理事業ハ全部完了シタルニ付キ之ニ伴ヒ民法中不動産上ノ権利ニ関スル規定ヲ同県下ニ施行スルノ必要アリ」というものであった。3同法案は同年12月10日に閣議決定され、第19回帝国議会に提出されることになった。4しかし同日開会された第19回帝国議会が翌日解散されたため、同法案は第19回帝国議会に提出されなかった。5明治38年12月6日に至り、司法・大蔵・内務3大臣が再び「民法中不動産ノ権利ニ関スル規定ヲ沖縄県ヘ施行スル法律案」の閣議決定を稟請したが、審議過程で法案が「民法施行法中左ノ通改正ス/第十条 削除」と修正され、「民法施行法中改正法律案」として明治39年1月27日閣議決定された。6同法案は明治39年2月2日第22回帝国議会に提出されたが、貴族院でも衆議院でも法案の内容について実質的な審議は行われず原案通り可決され、明治39年3月法律第13号「民法施行法中改正法律」として公布された。7同法は、明治39年5月勅令第120号により明治39年7月10日に施行され、同日より沖縄県に民法中不動産に関する規定が適用されることになった。8その結果土地整理事業の完了(明治36年)、臨時沖縄県土地整理事務局官制の廃止(明治37年3月3日)にも関わらず、沖縄県への民法中不動産に関する規定の適用が2年余り遅れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度においては年度当初から研究に着手し、平成25年度の当初の研究実施計画の内容(沖縄条項の削除過程に関する研究)はほぼ計画通りに進行した。ただし、沖縄条項の制定過程に関する研究の面では、平成25年度に新たに所在を確認した早稲田大学図書館所蔵岡松参太郎文書中の民法施行法案関係資料を収集したこと、前年度までに予定していた東京大学法学部所蔵穂積陳重博士旧蔵法典調査会関係文書中の民法施行法案関係資料の調査検討ができなかったこと等により、整理・分析作業を必要とする資料がなお残っており、この点で本研究の現在までの達成度はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては、当初の研究実施計画に従って、沖縄条項の制定及び削除の法的・歴史的意義について考察を進め、本研究の取りまとめを行うとともに、前年度までに一部未実施となった沖縄条項の制定過程に関する文献資料の調査検討を補充的に行う。 すなわち、前年度までに収集した沖縄条項の制定過程及び削除過程に関する文献資料の整理・分析をさらに進める。また、前年度までに実施できなかった東京大学法学部所蔵穂積陳重博士旧蔵法典調査会関係文書中の民法施行法案関係資料の調査検討を補充的に行う。 これらを踏まえて、沖縄条項の制定及び削除の法的・歴史的意義についての考察を進め、本研究を以下のような構成で取りまとめる。1.法典調査会における沖縄条項の審議、2.帝国議会における沖縄条項の審議、3.「民法中不動産上ノ権利ニ関スル規定ヲ沖縄県ニ施行スル法律案」の立案、4.沖縄条項削除に関する審議、5.沖縄条項の法的および歴史的意義。また、収集した資料を電子情報として入力したうえでこれを利用して本研究課題に関連する資料集(冊子)を作成したい。 そのため、本年度の研究を年度当初から着手し、研究計画を着実に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き、平成25年度も、収集した文献資料の電子情報としての入力作業を先送りしたことが主たる理由で「人件費・謝金」の支出がなかったために、研究費の次年度使用額が生じた。 前年度までに生じた次年度使用額については、平成26年度に請求する研究費とともに、上述の平成26年度の研究推進方策に沿って着実に使用していく。特に、「人件費・謝金」の予算に関しては、収集した文献資料の電子情報としての入力作業に早期に着手しこれを計画的に進める。また、「その他」の予算に関しては、入力した電子情報を利用して作成する本研究課題に関連する資料集(冊子)の印刷費用に充当する計画である。
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