最終年度の研究実施計画に従い国立国会図書館、国立公文書館及び沖縄県立図書館で補充的資料調査を行うと伴に、これまでに収集した沖縄条項の制定・削除の過程に関する資料の整理分析を進めた。 本年度の補充調査の結果、民法施行法は立案当時民法施行条例という名称で報道されていたこと、明治36年12月に閣議決定されながら解散のため帝国議会に提出されなかった「民法中不動産上ノ権利ニ関スル規定ヲ沖縄県ヘ施行スル法律案」については当時ほとんど報道されなかったこと、明治39年の民法施行法中改正法律により沖縄条項が削除され沖縄県に漸く民法中不動産に関する規定が適用されることになり登記所(区裁判所出張所)が明治39年7月に設置されたこと、不動産登記法とその付属法令には沖縄県への適用除外に関する明文の規定はなく解釈上不適用とされていたことなどが明らかになった。 3年間の研究を踏まえて、1法典調査会における沖縄条項の審議、2帝国議会における沖縄条項の審議、3「民法中不動産上ノ権利ニ関スル規定ヲ沖縄県ニ施行スル法律案」の立案、4民法施行法中改正法律案と沖縄条項削除に関する審議、5沖縄条項の法的および歴史的意義について考察を進め、本研究の取り纏めを行った。とりわけ1及び2については、沖縄の固有法たる旧慣土地制度の存在が沖縄県への不動産法の適用を困難としたため、沖縄条項を定めて土地整理事業による土地所有権の確定まで不動産法の適用を保留せざるを得なかったことが明らかになった。また5については、沖縄条項の削除と不動産登記制度の適用が土地の処分可能性をもたらしたことで、沖縄県における土地の流動化を高めて一部に土地集積現象を生み出し、さらに債権担保手段として新たな不動産担保が登場したことが沖縄の経済社会に大きな影響を与えた。 本研究の成果は今後論文として公表する。なお収集した資料の一部を資料集(冊子)として刊行した。
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