研究課題/領域番号 |
24530006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
船越 資晶 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70362548)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 批判法学 / 法的思考 / ポストモダニズム |
研究概要 |
本年度は、以下の研究を実施した。 第一に、ロベルト・アンガーの初期の著作、とりわけ『近代社会における法』の再検討を通じて、慣習法段階からポスト自由主義法段階へと至る法の発展経路に関するアンガーの叙述から、法的思考の史的展開に関する歴史社会学的モデルを抽出し、これを論文「初期アンガーの再活用―『法の支配』の歴史社会学」において発表した。この作業によって、本研究課題の目的である法的思考の発展図式「古典派⇒社会派⇒現代派」(以下「図式」)の一般化の試みについて、その歴史社会学的基礎を提供することができたと同時に、アンガーの法理論それ自体についても、これを(一般的な理解に反して現代派ではなく)社会派法理論として捉え直すことができた。 第二に、「図式」を具体的な事実によって肉づけするため、クリストファー・ラングデルを中心として、古典派の言説を収集・整理し、また、ロスコー・パウンドを中心として、社会派の言説を収集・整理した。さらに、古典派が崩壊し社会派が台頭することになった歴史的背景をより深く把握するため、アメリカ史の再検討を行った。 第三に、「図式」の肉づけをより十分なものとするため、ハーバード・ロー・スクールにおいて資料収集を行うと同時に、「図式」自体をより精緻なものとするため、その定礎者ダンカン・ケネディ教授と意見交換を行った。なお、ケネディ教授とは、わが国における法的思考の史的展開に関する研究代表者作成のメモに関しても意見交換を行い、これに対する教授からの貴重なコメントを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的である法的思考の発展図式「古典派⇒社会派⇒現代派」の一般化に向けて、本年度は、以下の成果をあげることができた。第一に、初期アンガー理論の再検討を通じて、「図式」自体の歴史社会学的正当化を行うことができた。第二に、古典派と社会派について、それぞれの言説の収集・整理を進めることができた。第三に、「図式」の定礎者ダンカン・ケネディ教授との対話を通じて、現代日本の法的思考の位置づけに関する論稿の構想をまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的である法的思考の発展図式「古典派⇒社会派⇒現代派」の一般化に向けて、今年度は当該図式全体に関する研究成果を公表することができたので、次年度以降は、個々の法的思考に関して順次研究成果を公表することを目指していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、本年度の研究費の使用によってデスクトップパソコンを更新することを検討していたが、他の研究費の使用を優先せざるを得なくなったため、「次年度使用額」が発生した。当該研究費については、本年度末に行った海外調査(ハーバード・ロー・スクール)の際に、情報収集・通信等のためその必要性が非常に高いことが判明した高機能のノートパソコン類の購入に充てることにしたい。その他については、当初の計画どおりに使用していきたい。
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