本年度は、以下の研究を実施した。 第1に、本研究課題が一般化を目指す法的思考の発展図式「古典派→社会派→現代派」(以下「図式」)のうち、現代派の淵源と目される構造主義の理路について再検討するとともに、構造主義以降の思想動向と「図式」の関連性について考察した。 第2に、昨年度行ったフェミニズム法学の検討を踏まえて、日本法社会学会学術大会において「批判法学はジェンダーの法理論に何をもたらすか?」と題する報告を行い、その原稿に加筆修正を施した論稿を学会誌『法社会学』において公表した。そこでは、フェミニズム法学者フランシス・オルセンの公私二元論批判・法的思考批判を、「図式」によって再構成するとともに、「図式」の定礎者ダンカン・ケネディの「性的衣装」論を、ジェンダー関連分野における現代派政策分析の範型と見なし得るものとして紹介検討した。さらに、ケネディの「職場政治」論を、「図式」が説く(法の外部が消滅した)現代の法状況においてなお可能な「ポストモダンの法戦略」として再定式化したが、これは、今後の研究課題において発展させることのできる知見であると考える。 第3に、本研究課題の総まとめとして、これまで研究を蓄積してきたアメリカ契約法学の系譜学と日本契約法学(錯誤論)の系譜学について、両者をさらに彫琢しつつ総合した。その成果を、「批判法学の実用化のために―錯誤論再論」と題する論稿にまとめ、『法学論叢』において公表する予定(現在印刷中)である。
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