研究課題/領域番号 |
24530011
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小口 彦太 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (40063797)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日中契約法の比較研究 |
研究概要 |
中国契約法中、履行の抗弁権および債権者代位権・債権者取消権に関して小口がまとめた論点に即して中国側学者および日本側学者と北京で2012年9月に研究会をもった。そこでは、先履行抗弁権の評価、同時履行抗弁権における存在効果説と行使効果説をめぐる中国での理論動向、不安抗弁権と解除を同時に規定することの問題、債権者代位権における被代位債権を中国が金銭債権に限定することの評価、債権者取消権における債務者を被告とすることと判決の相対効(給付との関係)などをめぐって、中国側学者と議論を交わした。 次に、2013年3月に東京で、債権譲渡、事情変更原則、危険負担に関して小口がまず論点を整理し、それについて中国・日本の学者が議論を交わした。そこでは、通知を対抗要件としない中国法における債権の二重(多重)譲渡の場合の効力の問題、債権の譲渡担保化の有無、契約制定段階では削除した事情変更原則が司法解釈で復活してきた背景、不可効力による契約目的実現不能につき契約解除を認める中国法のもとでの契約解除と危険負担の競合の問題が中心的議論となった。 上記2012年の研究会の成果のうち、履行の抗弁権については、すでにその報告は活字化済みである。また債権者代位権・取消権については、小口の論点に対する中国側学者の見解の原稿も提出済みで、夏までに日本側瀬川教授のコメントを付すという段階である。2013年3月の研究会の成果については、現在中国側学者で見解を執筆中で、夏までに原稿が提出される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国契約法を学部、大学院等で講義する中で論点がかなり明確になり、各領域における論点整理がうまくいき、またパートナーとなった中国側学者が、理論面のみならず実務面にも造詣が深く、一面的でない、かなり総合的把握が可能となった。また、日本民法学者が参加したことにより、日中契約法の理論と実務面で比較が可能となり立体的研究が可能となった。また、関連するテーマについての裁判例の収集が、早稲田大学からwest law chinaによる中国裁判例の検索を通じて可能となり、この点も、研究の順調な展開に資している。また、日中共同の作業のため、的確な通訳が不可欠であり、この点でもすぐれた通訳者=学者の助力を得ることができた。順調に進んでいる最大の理由は、研究代表者小口が研究のエネルギーの大半をこの研究に注いでいることによる。1年目の計画として、契約の履行段階での諸問題として、履行の抗弁権、債権者代位権、債権者取消権、債権譲渡、危険負担の検討を予定していたが、おおむねこなすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は契約法における契約の消滅および違約責任の検討を目的とする。契約の消滅においては、特に契約の解除が問題となる。中国契約法は国連動産売買契約条約や英米法の規定を参照した部分が多く、特にこの契約の法定解除や違約責任における厳格責任の検討が中心的論点をなす。まず、小口のほうで中国民法学界における理論状況の整理を行い、それにもとづく論点を中国側学者に今年の夏までにあらかじめ提示し、また日本側の日本民法学者にも提示し、それをもとに9月に北京で研究会を開催し、その議論の成果を研究会活動報告として活字にまとめる。また、裁判例の収集、分析も重要であり、この作業に従事する。これは小口単独の作業であり、この成果を公表していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の中心が日中学者の研究交流にあるので、日本側学者5人、中国側2人の渡航費が経費の中心となる。北京で一回、東京で一回の研究会を予定している。また、物品費としてプリンターの購入を予定している。裁判例のプリントアウトが相当膨大にのぼるため。書籍類も最近刊行されたものにつき、購入する。
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