研究課題/領域番号 |
24530013
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
戒能 通弘 同志社大学, 法学部, 教授 (40388038)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ベンサム / 功利主義 / コモン・ロー / 法思想史 |
研究実績の概要 |
平成26年度においては、編著書一冊、その編著書に収録された論文二本を執筆した。また、日本法社会学会と、国際功利主義学会、日本法哲学会で、学会報告をし、書評も一本書いている。 横浜国立大学の深貝保則氏と共編で、『ジェレミー・ベンサムの挑戦』というタイトルの著書を、研究成果公開促進費をいただき、2015年2月にナカニシヤ出版から公刊した。そのなかで、二本の論文を執筆している。「グローバリゼーションとベンサム」では、ベンサムの法典化論のグローバルな射程が持つ意義について検討した。また、「コモン・ロー的伝統とベンサムの法理論-「裁判官の慣習」と「一般的慣習」の峻別によるコモン・ロー批判」では、コモン・ローを一般的慣習に基づくとしたコモン・ロイヤーたちの議論に対するベンサムの批判を検討することで、判例法主義一般の正統化論についても検討している。 2014年5月には、法社会学会のミニシンポジウムで、「タマナハ教授の近代アメリカ法思想史研究とBalanced Realism」というテーマで報告し、タマナハ教授の近代アメリカ法思想史の研究について検討した。2014年8月には、横浜国立大学の国際功利主義学会にて、 「Bentham’s Pannomion and the Anglo-American Legal History」というタイトルで報告し、ベンサムの法典化論がコモン・ローの伝統からいくつかの影響を受けていたことと、その限界について考察した。2014年11月には、法哲学会のワークショップで、「立法をめぐる近代イギリスの法思想-19世紀を中心に」というタイトルで報告し、19世紀のアメリカも含め、立法とコモン・ローの関係を考察している。 なお、『法制史研究64』に、小畑 俊太郎『ベンサムとイングランド国制-国家・教会・世論』の書評も執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、わが国における判例法の役割の増大の状況を念頭に置き、イギリスやアメリカの判例法主義の国において、判例法、コモン・ローの正統性がどのように論じられてきたか、その批判者であったベンサムも含めて考察するものである。さらに、わが国の判例法学への示唆についても検討することを試みている。 ベンサムのコモン・ロー批判については、編著書収録の論文で、とりあえずの到達点を示すことができた。また、判例法対立法という視点から近代英米の法思想について考察した法哲学会の報告では、判例法優位の論拠、さらには、現代におけるその正統性のあやうさを示すことができた。また、国際功利主義学会の前の2014年8月には、「ベンサムの法思想、近代イギリス法実証主義に関するセミナー」を開催し、イギリス、アメリカ、中国の研究者に研究報告をしていただいた。特に、中国のZhai教授の報告は、コモン・ローとベンサムの法理論の近さを指摘するもので、現代社会において、立法と判例法を比較する際にも貴重な視座を提供していただいたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の到達点の一つは、国際功利主義学会にも参加していただいたイギリス、アメリカ、中国の研究者を招いた「ベンサムの法思想、近代イギリス法実証主義に関するセミナー」を開催することであった。さらには、そこでも報告していただいたイギリスのロンドン大学のロバーン教授には、コモン・ロー、判例法とは何かを考える上でも、非常に有益な、イギリス法制史、法思想史のセミナーでも、それぞれお話いただいた。 本年は、上記のセミナーで得た知見、さらに昨年の自身の学会報告を、国際法哲学社会哲学学会連合(IVR)の学会誌、そして『法の理論』に掲載いただくことが内定している。さらには、2016年3月に、アメリカのノース・カロライナ大学のポステマ教授を招聘し、現代的な視点から、コモン・ロー理論についてご報告いただく予定である。また、その少し前の、2月には、ロンドン大学のベンサム・プロジェクト主催のベンサム・セミナーで、ベンサムとコモン・ローの関係につき、これまでの成果を報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年8月に、「ベンサムの法思想、近代イギリス法実証主義に関するセミナー」を同志社大学で開催し、当初の予定通り、ロンドン大学のロバーン教授、UCバークリーのリーバーマン教授、鄭州大学のZhai教授にお話いただいた。ただ、ロバーン教授、Zhai教授は、急遽、別の資金を獲得されたため、リーバーマン教授の旅費、滞在費に使途が限定されてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
法思想史について最近大著を著し、現代的な観点からコモン・ロー理論について研究している、アメリカのノース・カロライナ大学のジェラルド・ポステマ教授に、2016年3月にご来日いただき、セミナーを開催させていただくことをご内諾いただいている。また、2016年2月には、ロンドン大学のベンサム・プロジェクトのベンサム・セミナーで、これまでの研究成果の集大成となるような報告をしたいと考えているが、こちらも、(具体的な日時、テーマは後日確定となるが)、報告させていただくことが内定している。以上の招聘費、旅費として使用させていただきたい。
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