ジェンダーに関する国際人権スタンダードとイスラーム家族法およびその制定法との相克について、男性を保護者・庇護者とみなす「カッワームン」の概念を手掛かりとして、比較検討し、論文「国際人権とイスラーム:ジェンダーを中心に」(福山市立大学都市経営学部紀要第7号)として公表した。 昨年度の研究で、イスラーム離婚法制の諸課題が、欧米の「法と政治 law and politics」や憲法学において昨今議論が繰り広げられている「政治の司法化」における論点を孕んでいることが明らかとなり先行研究の整理に着手をしたが、今年度は、さらにこの論点を掘り下げるべく、マレーシアで現地調査を遂行するとともに、各国の関係判例を検討した。とくにマレーシアでは、今年度は、イスラームに関する重要な事件が裁判所で争われた(一部は継続中)こともあり、格好の研究材料を入手することができた。 本研究の【第3の課題】たる「第1年度および第2年度に取り組んだ【第1の課題】および【第2の課題】で得られた結果を踏まえて、本研究の比較対象国におけるイスラーム離婚法制変容の方向性を提示する」に取り組み、その成果「イスラーム家族法とジェンダー」を、法社会学会年次総会(2015年5月10日)において公表した。固定化された性役割に基づく夫婦モデルに沿った家族法を制定する国が大半であり、かかる夫婦モデルを回付するための手段として夫婦契約が利用されている実態が明らかとなった。
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