本研究では、家父長的な伝統的イスラーム家族法の根幹をなす夫に課せられた妻の扶養義務と妻に課せられた夫への服従義務に着目して、マレーシア、モロッコ、エジプト、アラブ首長国連邦を中心としたイスラーム離婚法制について比較法学の観点から分析した。とくに着目したのは離婚の財産的効果であり、男女の不平等が夫婦契約や婚資等により抑制されていること、マレーシアの場合にはマレー慣習がイスラーム家族法の家父長的構造を減じる役割を果たしていることを明らかにした。また、近年のイスラーム家族法制が「法と政治」の論点を含むことも明らかにした。
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