1 日本国憲法の検討(対話のメカニズムと内容):平成26年度前半は、日本で可能な対話のメカニズムとその具体的内容の解明を行った。その際、カナダ憲法の研究で得られた知見をふまえ、カナダ憲法の下で可能な対話のうち、カナダ憲法特有のものと、一般化・普遍化可能な要素の区分を試み、日本国憲法の下でも可能な対話の要素を探った。 2 補充研究:これまでの研究やカナダにおける調査等をふまえ、必要な補充研究を行った。最新の判例としては、嫡出でない子の相続分差別に関する最大決平成25・9・4民集67・6・1320とその後の国会における民法改正の動き、衆議院の定数訴訟に関する最大判平成25・11・20判例時報2205・3とその後の政治部門の対応等を検討した。その結果、最高裁判所と政治部門との継続的対話には、立法裁量の幅を一定に維持する効果を持つもの(衆議院中選挙区制の下での一票の較差に関する継続的対話)と、立法裁量の幅を漸次的に狭める効果を持つもの(衆議院小選挙区制の下での一票の較差に関する継続的対話、参議院の一票の較差に関する継続的対話、民法900条4号但書に関する継続的対話)があることが明らかとなった(佐々木雅寿「最高裁判所と政治部門との対話-対話的違憲審査の理論」論究ジュリスト12号(2015年)206~217頁)。 3 研究成果のまとめと公表:平成26年度は、これまでの研究をふまえて、日本国憲法の下で可能な裁判所と政治部門の対話のメカニズムとその具体的内容をまとめ、論文として、また、座談会での発言として公表した(11.研究発表参照)。
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