本研究は、(1)行政改革の執行プロセスを多角的実証的に分析し、(2)行政改革により行政法理論のパラダイム転換が起きる可能性があると共に、(3)行政法理論により行政改革の新たな課題が提起される可能性があることを理論的に明らかにしようとするものである。 行政改革の執行プロセスを効率性という観点から分析した結果、(1)効率が手段から目的に変化したこと、(2)効率化の対象が組織・運営から政策を経て再び、組織・運営に戻ったこと、(3)効率という言葉が組織法・内部法で多用される一方、外部法ではあまり使用されていないこと、したがって(4)現時点では、効率性論による行政法のパラダイム転換は一部にとどまっていることが明らかとなった。 地方分権改革の執行プロセスを法的紛争や持続可能性という観点から分析した結果、(1)第3セクターや指定管理者制度のように地方分権改革と密接に関連した制度に関する法的紛争が増加していること、(2)地域振興が国主導から地域主導に変化しつつあるが、地域切り捨ての危険性もあること、(3)持続可能な地域社会に対する国・自治体の法的責任といった新たな問題を検討する必要があること、(4)地域振興に関するナショナルミニマム論や地域社会で生活する権利といった新たな行政法理論が生まれる可能性があることが明らかとなった。 国民生活に対する新たな危険や環境リスクに対応するために構築されつつある法システムを安全確保や民主主義という観点から分析した結果、(1)国家の安全確保責任の拡大に伴い省庁間での役割分担、とりわけ警察の位置付けが重要であること、(2)福島第一原発事故に伴い専門家への信頼が揺らぐ中で、各主体の完全確保を国民が実効的に監視できる法制度を新たに構築する必要があることが明らかとなった。
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