1990年代以降の日本では、政官関係、統治構造の大きな変化が生じてきた。本研究では、制度の比較と憲法学の観点から、憲法の規範的枠組と統治の変容の双方を視野に収めた、統治機構全般にわたる理論の構築をめざし、以下の点を明らかにした。①日本国憲法の統治機構の基礎には、民主的正統性の論理がある。②民主的正統性を備えた機関相互の競合、国会両院に対する内閣の責任など、民主的正統性・政治責任の論理が複合的な形で組み合わされている。③それらを通じ、等質性という法的構成原理と多様な社会の構成要素との調和が図られている。④憲法の政治機構から帰結される制度の論理が、競合して、憲法の統治機構の機能を規定している。
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