研究課題/領域番号 |
24530022
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
稲葉 一将 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50334991)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 公法学 / 行政法学 / ネットワーク / network neutrality / 支援 / 生活困窮者 / figuration |
研究概要 |
今年度は、ネットワークの観念が表現している素材の発見および絞り込み、に研究活動の重点を置いた。その結果、本事業が具体的な研究対象として絞り込むこととしたのは、(1)情報法領域におけるネットワーク、および(2)若者を包含する生活困窮者等の支援ネットワークである。(1)については、かねてフォローしてきたICANNに関する欧米における研究動向のほかに、network neutralityに関する法学の動向を調査した。(2)については、日本国内の事例や取組みの現地調査を含む調査を時間をかけて行った。 研究成果の内容、意義および重要性は、以下の通りである。(1)ネットワークの観念においては、主体と客体との分離独立とこれらの対外的な(法)関係というような理解は、困難である。たとえば、生活困窮者の支援の当事者(本人およびその支援者)は、支援の主体であるとともに(行政から補助金を受けるような場合には)客体でもある。ネットワークに組み入れられた個人の、ネットワークにおける「配置」(configuration)の観念が、権利義務からなる法関係よりも重要となりうる。(2)もちろん、ネットワークにおける「配置」は、ネットワークを構成する個々の相互関係のあり方を重視するものである。ただし、それは、法関係に解消されるものではなく、これよりも複雑で動態的なものと理解される。そのために、法関係以外の、複雑で動態的な相互関係を変化させるような手段が考察されなければならない。従来の概念を用いるとすれば、参加と応答(response)、の制度構築ということになるだろう。(3)しかし、参加と応答といった一般的な概念は、情報ネットワークや支援ネットワーク等の個別具体的特徴に即して再構成されるものでなければならない。 次年度の研究においては、上記を具体的素材に即して論証することが課題となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ネットワークの観念を重視する他国の法学者が公表した研究成果を予定通り入手して、論点整理をすることができたため。(2)国内における生活困窮者等の支援ネットワークの調査については、手探り状態で開始したが、調査協力者を得ることができて、また実際に現地調査を行うこともできたため。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)研究を開始してみたところ、情報法の分野では、ネットの中立性等を素材として、予想していたよりも多数の研究成果が、欧米の研究者によって公表されている。これらの成果物を入手して、分析する必要がある。 (2)生活困窮者等の支援については、今年度は、若者の支援だけ、しかも、若干の自治体の調査しかできなかった。調査しなければならない自治体がまだ多数存在しており、若者以外の生活困窮者の支援ネットワークについても調査が必要であるが、今年度は着手できなかったので、今後は調査を行いたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記に対応して、(1)情報法の分野におけるネットワークの研究についての研究書を購入するための費用が必要である。(2)国内における生活困窮者等の支援ネットワークの調査(ヒアリング)のための旅費、専門的知識提供に対する謝金が必要である。
|