研究課題/領域番号 |
24530023
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
曽我部 真裕 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80362549)
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研究分担者 |
田近 肇 岡山大学, 法務研究科, 教授 (20362949)
井上 武史 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (40432405)
奥村 公輔 駒澤大学, 法学部, 講師 (40551495)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 憲法裁判 / イタリア憲法裁判所 / フランス憲法院 / ベルギー憲法裁判所 / スペイン憲法裁判所 / 民主的正統性 |
研究概要 |
まず、予備会合(5月13日(日))を開き、平成24年度の研究活動方針として、ヨーロッパ大陸諸国の憲法裁判所に関して、各研究分担者がそれらの組織・権限等その概略を把握するとともに、その研究成果を研究会において発表することによって研究分担者全体でそれらに関する知識を共有していくことを確認した。 その上で、まず、第1回研究会(9月1日(土))において、研究分担者である奥村、井上、田近が、それぞれ、ベルギー憲法裁判所、フランス憲法院、イタリア憲法裁判所の概略についての研究報告を行った。次に、第2回研究会(12月22日(土)14時~17時、岡山大学津山北キャンパス文化科学系総合研究棟2階第6演習室)において、研究協力者のペドリサがスペイン憲法裁判所の概略についての研究報告を行い、また、国立国会図書館の芦田淳氏にイタリア憲法裁判所に関する知識の提供を受けた。 2月には、田近とペドリサがイタリアとスペインにおいて現地調査を行った。そこで憲法裁判所の調査官や裁判官にインタビューを行い、貴重な知見を得ることができた。この両名の現地調査については、第3回研究会(3月18日(月))において、それぞれの調査報告が行われた。 これらの研究活動を踏まえて、本年度は、以下の研究成果を残すことができた。①井上武史「フランス憲法院への事後審査制導入の影響―通常裁判所の法解釈に対する違憲審査」岡山大学法学会雑誌62巻1号(2012年8月)164-142頁、②田近肇「イタリア憲法裁判所関係法令集」岡山大学法学会雑誌62巻2号(2012年12月)366-334頁、③同「イタリア憲法裁判所の制度と運用」岡山大学法学会雑誌62巻4号(2013年3月)268-224頁,④曽我部真裕「フランスにおける違憲審査制度改革」(比較憲法学会報告)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、各研究分担者が担当する国の憲法裁判所の概略を把握し、研究分担者全体でそれらに関する知識を共有し、また、それぞれの国の憲法裁判所に関する問題点を発見していくことを目的としていたが、これは概ね達成されていると言えよう。 第一に、各研究分担者は、それぞれの文献に基づく研究を通じて、担当する国の憲法裁判所の概略を把握することができた。実際、フランスに関しては、研究分担者である井上がその成果を1本発表し、イタリアに関しては、研究分担者である田近がその成果を2本発表することができた。また、イタリアとスペインに関しては、田近と研究協力者であるペドリサが現地調査に赴き、憲法裁判所の調査官や裁判官にインタビューを行った。これによって、文献からは知ることはできない、憲法裁判所の実態を知ることができた。 第二に、3回にわたる研究会において、各研究分担者が文献や実地調査によって得たそれぞれの知見を報告し、研究分担者全体においてそれらを共有することができた。研究会には研究分担者及び研究協力者以外の研究者にも参加してもらうことができ、とりわけ質疑応答においては、活発な議論が行われ、研究分担者全体にとって多くの知見を得ることができた。 第三に、研究分担者の文献による研究、田近及びペドリサによるイタリア・スペインの実地調査、そして3回にわたる研究会を通じて、フランス、ベルギー、イタリア、スペインのそれぞれの憲法裁判所の類似点と相違点を発見することができ、それぞれの憲法裁判所の問題点についての共通認識を持つことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,昨年度に把握した知見を前提に,各分担者が個別のテーマを掘り下げることによって全体の研究課題に接近する。具体的には以下の通り。 まず,ベルギー憲法裁判所を担当する奥村は,次の方針によって進める。1984年に発足した仲裁裁判所は、2003年の1989年1月6日特別法改正によって憲法の保障するすべての基本権を保護する完全な人権保障機関へと転身し、また、2007年の憲法改正によって、その名称は憲法裁判所となった。今年度は、この憲法裁判所の人権保障機能を検討し、また、ベルギーでの現地調査を行うことによって、この点について専門家および実務家から知識の提供を受ける予定である。] イタリア憲法裁判所担当の田近は、前年度の研究成果を踏まえ、今年度は、憲法裁判所の判決手法のうち、操作的判決と呼ばれる手法について、国会の立法権・予算議決権との関係がどのように理解されているのか、つまり、政治部門との関係で憲法裁判所の地位や役割がどのように位置づけられるものと理解されているかに焦点を当てて研究を進める。 フランス憲法院担当の井上は、2008年憲法改正による事後審査制導入の後、憲法院が法形成においてどのような役割・機能を果たしているかについて、憲法院と議会との関係、および通常裁判所との関係に焦点をあてて検討を行う。また、今年度はフランスで現地調査を行い、上記について専門家および実務家から知識の提供を受ける予定である。 最後に、研究代表者である曽我部は,全体の統轄を行うと同時に、研究協力者であるペドリサの援助を受けつつ、スペイン憲法裁判所について引き続き調査を進め、また,フランス憲法院の政治的機能について、井上とは異なる角度から検討する。また,井上とともに現地調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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